欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/6/27

EU情報

ウクライナとモルドバを加盟候補国に認定、対ロ追加制裁は見送り=EU首脳会議

この記事の要約

EUは23日の首脳会議で、ウクライナとモルドバを「加盟候補国」として認定した。全加盟国による全会一致で決まった。ロシアのウクライナ侵攻から4カ月を迎えて厳しい戦況が続く中、両国はEU加盟に向けて第一歩を踏み出した。EUの […]

EUは23日の首脳会議で、ウクライナとモルドバを「加盟候補国」として認定した。全加盟国による全会一致で決まった。ロシアのウクライナ侵攻から4カ月を迎えて厳しい戦況が続く中、両国はEU加盟に向けて第一歩を踏み出した。

EUのミシェル大統領は記者会見で「歴史的な瞬間だ。われわれの将来は共にある」と強調。ウクライナのゼレンスキー大統領はインスタグラムで「独立からの30年間で最も重要な決定の1つだ」と喜びを表明し、各国首脳らに対して謝意を表した。ツイッターにも「ウクライナの将来はEUにある」と書き込んだ。モルドバのサンドゥ大統領はフェイスブックに「モルドバにとって歴史的な日だ」と投稿。「(加盟に向けて)改革を進め、より良い未来のために前進する」と表明した。

ウクライナとモルドバについては欧州委員会が17日、加盟候補国として認めるよう加盟国に勧告していた。ウクライナはロシアが同国への軍事侵攻を開始した直後の2月28日、モルドバは3月3日に加盟申請しており、4カ月弱という異例の早さで認定が決まった。21日の閣僚理事会では「時期尚早」との意見も出たが、大半が加盟候補国の認定を否定すれば「EUの結束が揺らぐ」との認識を共有し、認定に必要な全会一致の決定につながった。

一方、欧州委はモルドバと同じタイミングで加盟申請したジョージアについて、政治や経済分野の改革を進める必要があるとして、認定の勧告を見送った。首脳会議では、こうした問題点が改善された時点で同国を候補国として認定する方針で一致した。

加盟候補国に認定されても、即座に加盟交渉が始まるわけではなく、ウクライナとモルドバには加盟実現までの長い道のりが待ち受ける。加盟交渉では35の分野で個別の協議を進める必要があり、実際の加盟までは10年前後を要するのが一般的だ。欧州委はウクライナを加盟候補国として認定するよう勧告した際、EU基準を満たすには汚職対策や司法・経済分野で幅広い改革を進める必要があると指摘している。

首脳会議ではウクライナへの支援策として、年内に最大90億ユーロの財政支援を実施することで合意した。「例外的なマクロ金融支援」との位置付けで、欧州委が国際的な金融機関や専門家などと協議して早急に具体策をまとめる。また、加盟国は欧州委に対し、ウクライナの復興支援計画の策定を急ぐよう求めた。

ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの制裁に関しては、東欧諸国などが第7弾の制裁案を早期にまとめるよう求めていたが、ドイツなどが慎重な姿勢を崩さず、追加制裁は見送られた。首脳会議では5月の前回会議で合意した海路からのロシア産石油の禁輸など、これまでに決定した一連の制裁を確実に実施するとともに、制裁の抜け道をふさぐための監視を強化する方針を確認した。

このほかロシアが黒海を封鎖したことで、ウクライナからの穀物輸出が滞っている問題についても対応策を協議した。加盟国はエネルギー資源と並んで食糧を「武器化」しているロシアを強く非難し、陸路とEU域内の港湾を利用してウクライナからの輸出を支援する方針で一致した。

さらに首脳会議では、フランスのマクロン大統領が提唱する「欧州政治共同体」構想についても意見交換し、創設に向けた協議を継続することで合意した。民主主義などの価値観を共有するEU加盟国と非加盟国が政治、経済、安全保障、エネルギーなどの分野で協力関係を強化し、EUを超えて欧州安定の枠組みを構築するのが狙い。マクロン氏は首脳会議後の記者会見で、ウクライナなどを招待して年内に初会合を開く方針を明らかにした。欧米メディアによると、7月からEU議長国を務めるチェコの首都プラハで開かれる可能性が高い。