ロシア国営天然ガス会社ガスプロムは15日、パイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州向けのガス供給量を16日から1日当たり最大6,700万立方メートルに制限することを明らかにした。同社は容量(1億6,700万立方メートル)の60%に当たる1億立方メートルしか輸送できないと14日に発表したばかり。その翌日にさらに20%の引き下げを表明したことから、ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相は「政治的な決定だ」と批判した。
同社は供給削減の理由を14日、独シーメンス・エナジーに委託したガスコンプレッサー部品の修理が遅れているためと説明した。15日の説明も機器の欠如を理由としている。
シーメンス・エナジーは14日メディアの問い合わせに、ガスプロムからオーバーホールを請け負ったコンプレッサー用タービンが現在、カナダにあることを明らかにしたうえで、カナダの対露制裁を受けて同タービンをロシアに輸送できなくなっていると回答した。
一方、ハーベック氏は15日、問題となっているコンプレッサーのメンテナンスは本来、秋に始まるとする、独政府が把握した情報を明らかにした。メンテナンスの時期を大幅に前倒しした背景には政治的な意図があるというのが同氏の見方だ。
ドイツ国内のガス供給には現時点で支障が出ていない。ただ、冬季には暖房用の需要が急増することから、政府はロシアからの供給が止まっても対応できる体制を構築する意向だ。すでに法改正を通して貯蔵事業者に備蓄を義務付けた。貯蔵施設に対し暖房シーズンが始まる10月1日時点で毎年、容量の80%以上、12月1日時点で90%以上の貯蔵が義務付けられている。冬の暖房需要で貯蔵量が減る2月1日時点でも40%ラインの維持しなければならない。
ガス貯蔵量は現時点で55%。ノルドストリーム1経由の供給が大幅に減ると、十分な蓄えがない状態で暖房シーズンに突入する懸念がある。