欧州議会が巨大IT企業規制の2法案可決、今秋にも施行へ

欧州議会は5日の本会議で、巨大IT企業に対する2つの規制案「デジタルサービス法(DSA)」案と「デジタル市場法(DMA)」案をそれぞれ賛成多数で可決した。加盟国で構成する閣僚理事会と欧州議会はすでに両法案の内容で合意しており、閣僚理の正式な承認を経て、今秋にも施行される見通しだ。

デジタルサービス法案は、EU域内でオンライン仲介サービスを提供する事業者に著作権侵害動画やヘイトスピーチ、児童ポルノといった違法コンテンツや、模造品や海賊版など違法商品の削除を義務付ける内容。交流サイト(SNS)や検索エンジン、コンテンツ共有サービスなどを提供するオンラインプラットフォームなどが規制の対象となる。

事業者は違法コンテンツの排除とともに、違法性のあるコンテンツを第三者が通報できる仕組みを構築する必要がある。宗教や人種、性的指向、政治的信条などに基づくターゲティング広告を禁じ、ターゲティング広告を目的とする未成年者からのデータ収集も禁止する。また、サービスの解約に際し、加入時と同様の簡単な操作で手続きが完了するようにしなければならない。

月間ユーザー数がEUの全人口の10%に相当する4,500万人を超えるプラットフォームは、加盟国ではなく欧州委員会の監督下に置き、より厳しい規制を適用する。巨大プラットフォームの運営者は特定ユーザーが興味を持つと思われるコンテンツや商品を提示する「レコメンドシステム」のアルゴリズムを定期的にチェックし、当局の求めに応じて関連する情報を提供する必要がある。また、違法コンテンツの流通や、選挙や公衆衛生、治安などに関連した意図的な情報操作に自社のシステムが悪用されるリスクを分析し、緊急時に偽情報やプロパガンダを制限するなどの措置を講じることが義務付けられる。

デジタルサービス法に違反した企業は世界全体の売上高の最大6%の制裁金を科される。

一方、デジタル市場法案は、市場支配的な立場にあるプラットフォーマーの影響力を抑えて公正な競争を促すため、「ゲートキーパー(門番)」と呼ばれる巨大プラットフォーム企業に対し、他社のサービスを排除したり、自社サイトで自社の製品やサービスを優遇するなどの行為を禁止する。EU域内で検索エンジンや交流サイト(SNS)、動画共有サイト、クラウドサービスなどの「コア・プラットフォーム」サービスを展開する事業者のうち、時価総額が750億ユーロ(約10兆円)以上か域内の年間売上高が75億ユーロを超え、域内のサービス利用者が月間4,500万人以上で、法人ユーザーが年間1万社を超える事業者が規制の対象となる。

米グーグルやメタ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム、アップルなど、ゲートキーパーに該当する企業は自社の製品やサービスを検索結果で上位に表示したり、自社サイトを利用する競合他社のデータを使って自社サービスが有利になるようにするなどの反競争的行為が禁止される。スマートフォンなどに特定のアプリを予めインストールすることもできなくなる。

また、寡占化が進むのを防ぐため、ゲートキーパーはいかなる買収計画も欧州委に報告しなければならず、欧州委は潜在的な競争の脅威をつぶす目的で新興企業を買収する「キラー買収」を阻止することができる。

デジタル市場法に違反した企業は世界における年間売上高の最大10%の罰金が科される可能性があり、違反行為を繰り返せば最大20%に引き上げられる。

欧州委員会のベステアー上級副委員長は声明で「欧州議会は世界初となるオンラインプラットフォームに対する強力で野心的な規制を採択した。事業規模が大きいほど負うべき責任も大きくなる。巨大プラットフォームとしてやらなければならないことと、やってはならないことがある」と指摘した。

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