気候変動リスクで700億ユーロ超の損失も、ECBがストレステストの結果公表

欧州中央銀行(ECB)は8日、気候変動がユーロ圏の銀行にもたらす影響を分析した初のストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。炭素価格の高騰と洪水や干ばつなどの自然災害が重なった場合、少なくとも700億ユーロ(約9兆6,000億円)の損失が発生する可能性があると指摘。災害の激甚化などによって取引先企業の資産が毀損すれば銀行の不良債権も増えるため、気候変動リスクを正確に把握し管理する取り組みを強化するよう促した。

ECBは2022年1月~7月にユーロ圏の104行を対象にストレステストを実施した。損失額はこのうち41行について、自然災害や炭素価格の高騰に伴う信用リスクと市場リスクを分析して試算したもの。景気後退などの間接的な影響は考慮していないため、実際の損失は700億ユーロを大幅に上回る可能性がある。

またECBによると、60%の銀行では気候変動リスクをモデル化してストレステストに組み込む体制が整っておらず、融資を行う際に気候変動リスクを考慮している銀行は20%にとどまるという。

ECBはストレステストの結果を受け、「ユーロ圏の銀行は、早急に気候変動リスクを測定・管理するための取り組みを強化する必要がある」と指摘。そのうえで、今回の結果を各行が直面するリスクの検証などに反映させるものの、銀行ごとに求められる自己資本の水準に直接影響することはないと説明している。

欧州ではフランス金融当局が昨年、銀行と保険会社を対象に気候変動に関するストレステストを実施。英イングランド銀行も5月にストレステストの結果を公表し、気候変動を抑制するための追加的な対策が講じられず、地球温暖化が最も深刻化するシナリオでは、大手銀行や保険会社の年間収益が10~15%減少する恐れがあると警告した。

上部へスクロール