英中央銀行のイングランド銀行は9月28日、英国の長期国債を一時的に無制限で買い取ると発表した。政府が打ち出した経済政策への懸念から英国債が急激に値下がりしていることに対応する。
トラス政権は23日に大型減税を柱とする経済対策を発表したが、これによって財政が悪化するため、市場では国債が売られ、価格の下落、利回りの上昇が進んでいた。通貨ポンドも大幅に下落した。
中銀は国債を買い支えるため、同日から10月14日まで13日間にわたって、市場で国債を買い入れる。残存期間(発行済み債券の償還日までの残り期間)が20年以上の国債が対象となる。1日当たりの購入額は最大50億ポンドを目安とし、これに基づく買い取り総額は650億ポンドに達するが、必要に応じて無制限で買い入れる。
この緊急措置は英金融システムの安定化を図るのが狙い。特に英国債を大量に保有する年金基金が、国債の値下がりで資産価値が減り、担保の追加差し入れを迫られるなど厳しい状況に追い込まれていたことを念頭に置いている。
中銀はインフレ対策として、金融引き締めを進めており、量的緩和策として買い入れた英国債の売却を10月初めに開始するはずだったが、金融市場の動揺を抑えるため方針転換した。売却開始は10月末に延期する。
◇大型減税策、所得税の最高税率引き下げは撤回
一方、英国のクワーテング財務相は3日、大型減税策のうち所得税の最高税率を引き下げる案を撤回すると発表した。
減税策をめぐっては、財政悪化を招く懸念からポンドが急落するなど、金融市場で混乱が広がっていた。特に、年収15万ポンド(約2440万円)を超える人を対象となる所得税率を45%から40%に引き下げる案については、高所得者優遇で、格差が拡大するとして与党内からも批判が出ていた。