欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/10/10

EU情報

EU首脳会議がガス価格上限設定で合意できず、欧州委が具体策提示へ

この記事の要約

EUは7日、プラハで非公式首脳会議を開き、エネルギー価格高騰への対応策について協議した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を起点とする天然ガスの価格高騰をめぐり、企業や家計の負担を軽減するため取引価格を抑制する必要がある […]

EUは7日、プラハで非公式首脳会議を開き、エネルギー価格高騰への対応策について協議した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を起点とする天然ガスの価格高騰をめぐり、企業や家計の負担を軽減するため取引価格を抑制する必要があるとの認識で一致したものの、上限設定については加盟国の間で溝が埋まらず、合意することができなかった。今月20~21日に開く次回の首脳会議に向け、欧州委員会が各国の意見を踏まえて具体策をまとめる。

EUでは電力料金が実質的にガス価格と連動しているため、天然ガス価格の高騰によって電力料金が記録的な高水準で推移している。フランスやイタリア、ポーランドなど15カ国は9月下旬、欧州委に書簡を送り、記録的な高インフレを抑制するためガス価格の上限設定が必要と訴えた。これに対し、ドイツ、オランダ、デンマークなどは価格が抑制されるとガス消費削減のインセンティブが弱まり、需要期の冬を乗り切るための「節ガス」の推進に水を差しかねないなどとして、上限設定に反対している。

上限設定の具体的な方法としては、域内で消費されるすべてのガスに価格上限を設けるほか、発電に使用するガスや、ロシア産ガスに対象を限定する案などが検討されている。いずれにせよ、価格上限を設定した場合、実際の市場価格との差額を政府が補填する必要があり、巨額の財政負担が生じる可能性がある。

欧州委のフォンデアライエン委員長は会議後の記者会見で「冬の終わりにガス在庫が減少した際に加盟国がそれぞれ必要な供給量を確保しようと争う事態を避けるため、ガスの共同調達を進めることが最も重要だとの認識で一致した」と強調。そのうえで、経済力のある国が独自にガス価格の上限設定に踏み切れば「単一市場が分断される」と警告し、EUとして必要な資金を調達する必要があるとの考えを示した。