欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/10/17

EU情報

EU加盟国が天然ガス共同調達で合意、欧州委がエネ高騰対策の具体案発表へ

この記事の要約

EUは12日、プラハで開いた非公式エネルギー相会合でエネルギー価格高騰への対応策を協議し、来冬に向けて天然ガスの共同調達を進めることで合意した。ロシアのウクライナ侵攻を起点とする供給不足が続くなか、加盟国間の獲得競争によ […]

EUは12日、プラハで開いた非公式エネルギー相会合でエネルギー価格高騰への対応策を協議し、来冬に向けて天然ガスの共同調達を進めることで合意した。ロシアのウクライナ侵攻を起点とする供給不足が続くなか、加盟国間の獲得競争による価格上昇を防ぐと共に、価格交渉力を高める狙い。一方、ガス価格に上限を設ける案については今回も合意に至らなかった。

天然ガスの共同調達は、欧州委員会が価格高騰対策の一環として提案していた。現在は加盟国がそれぞれ個別に自国分を調達しているため、財政基盤の強固な国が結果的に取引価格を引き上げ、規模の小さい国が不利な状況に置かれているとの不満がある。共同調達に切り替えれば加盟国間の競争を回避できるうえ、供給元との交渉でもEUが優位に立つことができる。

EU議長国チェコのスィーケラ産業・貿易相は会合後の記者会見で、加盟国がガスの共同調達で合意したことを明らかにし、2023~24年の冬に備えて来夏までの開始を目指す方針を示した。

一方、欧州委のシムソン委員(エネルギー担当)は記者会見で、18日にもエネルギー価格高騰を抑制するための政策パッケージを発表する方針を明らかにした。ガス共同調達の具体的な方法や、ガス価格の上限設定案に加え、欧州の天然ガス価格の指標となっている「TTF」を補完する新たな指標の導入計画などが盛り込まれる見通しだ。

ガス価格の上限設定をめぐっては、フランスやイタリア、ポーランドなど15カ国が9月下旬、欧州委に書簡を送り、記録的な高インフレを抑制するため上限設定が必要と訴えた。これに対し、ドイツ、オランダ、デンマークなどは価格が抑制されるとガス消費削減のインセンティブが弱まり、需要期の冬を乗り切るための「節ガス」の推進に水を差しかねないなどとして、上限設定に反対している。

上限設定の具体的な方法としては、域内で消費されるすべてのガスに価格上限を設けるほか、発電に使用するガスや、ロシア産ガスに対象を限定する案などが検討されている。欧州委は最終的に、発電用ガスに限定した上限設定案を政策パッケージに盛り込むとみられているが、シムソン氏は「加盟国から十分な支持が得られるかは分からない」と述べた。