EU、23年冬のガス消費9~13%削減が必要=IEA

国際エネルギー機関(IEA)は3日、世界の天然ガス市場に関する四半期レポートを公表し、ロシアが欧州へのガス供給を継続的に絞り込んでいるため、2023年も世界的に天然ガスの需給逼迫が続くとの見通しを示した。欧州ではバルト海を経由してロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の損傷により、ロシア産ガスの供給停止が長引く恐れが高まっており、EUでは冬季のガス消費を例年に比べて9~13%減らす必要があると分析している。

EUはこれまで天然ガス需要の約40%をロシアに依存してきたが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景に、ロシアからの輸入量は例年に比べて半分程度に縮小した。ガス需要が高まる冬場を乗り切るため、EUは域内の天然ガス施設に対し、11月1日までに貯蔵率を80%に引き上げるよう求めているが、レポートによると、9月末時点で貯蔵率は90%近くに達している。米国やカタールからの液化天然ガス(LNG)の輸入拡大や、ノルウェーなどからパイプライン経由の供給が増えたためだ。

ただ、今後はアジア諸国などとの間でLNGの獲得競争が激化しそうで、十分な供給量を確保できなかった場合、EUは前例のないリスクに直面する可能性がある。そこでIEAは11月以降にロシア産ガスの供給が完全に停止した場合、EUガス市場にどのような影響が及ぶかを分析した。

それによると、想定するLNGの供給量が確保された場合でも、来年2月時点でガス貯蔵率は20%未満となり、LNGの供給量が少なければ5%程度まで落ち込むと試算。LNGの供給量が少ないシナリオで貯蔵率を25%以上に維持するには、冬のガス消費量を過去5年間の平均と比べて9%減らす必要があり、貯蔵率を33%以上に維持するには13%の消費削減が必要と分析している。

上部へスクロール