英スナク新首相が欧州委員長と初会談、北ア問題の早期解決で合意

英国のスナク新首相は7日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長と初会談し、英領北アイルランドの通商ルールをめぐるEUとの摩擦解消に向けて協議を進めることで合意した。英の政局混乱で棚上げ状態となっていた同問題の早期解決を図る。

同会談はエジプトのシャルムエルシェイクで開催中の第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)に合わせて行われた。英首相府の報道官によると、スナク首相は英国がEUを離脱した後の北アイルランドの通商ルールに関するEUとの対立を「真の大問題だ」と述べ、解決策を見出す必要性を改めて強調。フォンデアライエン委員長も同認識を共有し、同問題での合意に向けた協議を進めることで一致した。

EUと英国が結んだ離脱協定の「北アイルランド議定書」では、EU加盟国のアイルランドと国境を接する英領北アイルランドを実質的にEUの関税圏に残し、英本土との間で通関手続きを行うよう定める取り決めが盛り込まれた。しかし、英側は議定書の規定を改正し、英本土から北アイルランドに入る物品の通関・検疫手続きを不要とすることなどを目指している。ジョンソン政権下の6月には、北アイルランド議定書の一部を一方的にほごにする「北アイルランド議定書法案」が議会に提出された。

これにEUは猛反発し、7月に英国に対する法的措置に着手。このほか、EUの科学研究プログラムから英国を締め出す動きを見せるなど、ぎくしゃくした関係が続いている。

同問題をめぐる協議は、ジョンソン元首相の辞任を機に停滞。後継のトラス政権が短命に終わったこともあって、事実上の凍結状態にある。これが北アイルランドの政局にも大きな影響を及ぼしている。5月に実施された議会選挙で、議定書を支持するカトリック系のシン・フェイン党が最多議席を獲得して初めて第1党となったが、自治政府の運営には第2党に転落したプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立が必要。反議定書派のDUPが議定書の見直し、破棄を求め、連立を拒否していることから自治政府が樹立できない状態だ。このため、スナク政権にとってはEUとの合意が急務となる。

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