ノルウェーのアースランド石油・エネルギー相は11月29日、2025年9月に実施予定の次回総選挙まで未開発地における油ガス田の探査ライセンスを発行しない方針を明らかにした。2023年予算案をめぐる交渉で、中道左派の労働党と中央党による少数連立政権が野党・左派社会党(SV)の要求を受け入れた形。ストーレ首相率いる現政権では新規の探査ライセンスは発行されないことになる。
北極圏のバレンツ海海域など開発が進んでいない探査鉱区をめぐり、当初22年中に実施される予定だった第26次ライセンスラウンドは、既に連立与党とSVが1年延期することで合意していたが、新たな取り組めに基づき25年秋以降まで同措置を延長する。アースランド氏はロイター通信とのインタビューで「SVは新たに次回総選挙まで新規の探査ライセンスを供与しないよう要求し、われわれはこれを受け入れた」と述べた。
ノルウェーは北海油田に面し、石油と天然ガスが輸出収入の約4割を占める西ヨーロッパ最大の産油国であり、ロシアのウクライナ侵攻後は欧州最大の天然ガス供給国となっている。一方、同国は電気自動車の普及や水力を中心とする再生可能エネルギーによる電力供給の推進など、気候変動への取り組みも積極的に進めている。ストーレ氏率いる労働党は環境に配慮しながらエネルギー開発を継続する立場だが、SVは新規開発の停止を掲げており、連立与党側は政権運営のため譲歩を余儀なくされている。
21年9月の総選挙では労働党と中央党、SVの左派勢力で過半数を獲得した。ストーレ氏は当初、SVも含めた3党による連立を目指したが、気候変動対策とエネルギー開発をめぐる政策で溝を埋めることができず、2党での少数政権となった経緯がある。