欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/12/12

EU情報

クロアチアのシェンゲン協定参加が承認、東欧2カ国は見送り

この記事の要約

EU加盟国は8日に開いた司法・内務理事会で、欧州内での人の自由な移動を保障するシェンゲン協定にクロアチアが参加することを承認した。一方、欧州委員会が同時に勧告していたブルガリア、ルーマニアの参加は、オーストリアとオランダ […]

EU加盟国は8日に開いた司法・内務理事会で、欧州内での人の自由な移動を保障するシェンゲン協定にクロアチアが参加することを承認した。一方、欧州委員会が同時に勧告していたブルガリア、ルーマニアの参加は、オーストリアとオランダの反対で見送られた。

欧州委は11月16日、ブルガリア、ルーマニア、クロアチアがシェンゲン圏入りに必要な基準を満たしたとして、協定参加を承認するよう勧告していた。理事会ではクロアチアの参加が認められたが、ブルガリアとルーマニアについては、不法移民の増加に悩むオーストリアが拒否権を発動。オランダも追随した。

シェンゲン協定は加盟国間を出入国審査なしで、パスポートを携帯しなくても行き来できるようにするもの。現在はEU加盟27カ国のうちアイルランド、キプロス、ルーマニア、ブルガリア、クロアチアを除く22カ国と、非加盟国のノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタインを加えた計26カ国が参加している。

シェンゲン圏では、圏外の国からの旅行者が国境検査を経て入国すれば、圏内の他の国もパスポートなしで自由に旅行できるため、参加国は犯罪者などの入国を阻止するため、厳しい国境管理を求められる。

オーストリアとオランダは、ブルガリアとルーマニアは不法移民などをチェックする体制が整備されておらず、汚職も横行しているとして、現時点での両国の参加を認めなかった。

2007年にEU加盟を果たしたブルガリア、ルーマニアは、2011年に協定参加の可否の審査を終えたが、一部の加盟国が汚職、組織犯罪対策の不備を問題視し、加盟が先送りされてきた。

両国政府は今回も参加が拒否されたことに失望感を表明。参加を再申請する方針を示した。また、欧州委のヨハンソン委員(内務担当)は、両国がシェンゲン圏入りに「ふさわしい」にもかかわらず、承認には加盟国の全会一致が必要で、一部の国の反対で見送られたことに遺憾の意を表明。「ブルガリア、ルーマニアの市民と失望感を共有している」と述べた。

クロアチアは2023年1月1日からシェンゲン協定に参加する。これによってシェンゲン圏は27カ国に拡大する。