航空部排出枠無償割当を26年までに廃止、欧州議会と加盟国が改正案で基本合意

欧州議会とEU加盟国は7日、航空部門に適用されるEU排出量取引制度(EU-ETS)に関する指令の改正案で基本合意した。欧州経済領域(EEA)内を運航する航空便に対する排出枠の無償割当を2026年までに廃止することを柱とする内容。航空会社に従来型の化石燃料から持続可能な航空燃料(SAF)への移行を促すのが狙いだ。欧州議会と閣僚理の正式な承認を経て新ルールが導入される。

改正案は、30年までにEU域内の温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減する目標を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、欧州委員会が21年7月に発表した。30年までの削減目標を当初の90年比で最低40%から同55%に引き上げたのに伴い、EU-ETSの適用対象となっている部門(鉄鋼・セメント・石油精製などのエネルギー集約型産業、火力発電、EEA内の航空便など)について、毎年の排出上限の削減率を現行の2.2%から4.2%に引き上げることや、新たに国際線航空便や海運、道路、建物を規制の対象とするなどの改正案とともに、航空部門に対する無償排出枠の段階的廃止を提案していた。

欧州議会と加盟国の合意によると、EEA内を運航する航空便に対する排出枠の無償割当を24年に25%、25年に50%削減し、26年末までに全面廃止してオークション方式の有償割当に完全移行する。

一方、脱炭素に向けた一時的な措置として、植物などのバイオマス由来や廃棄物・廃食油を原料とするSAFを使用する航空会社に対し、24~30年に2,000万トン分の排出枠を無償で提供して安価な化石燃料との価格差を部分的に補填する。

また、欧州委は25年から「測定・報告及び検証(MRV)」システムを運用して、航空機から排出される二酸化炭素(CO2)以外の温室効果ガス排出量をモニターし、28年までに影響評価を行ったうえで排出削減に向けた具体策を検討する。

EEAと域外を往来する国際航空便に関しては、国際民間航空機関(ICAO)の「国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」が適用される。市場メカニズムを活用して排出削減を行う同スキームは21年~23年が実証フェーズとなっており、10月のICAO総会では24年以降の排出枠について、19年の排出量の85%をベースラインとすることで合意した。

今回の合意によると、欧州委は25年のICAO総会後にCORSIAが実際にどの程度、温室効果ガス排出削減に貢献しているかを検証し、パリ協定の目的に照らして効果が不十分と判断した場合、EEAから出発するすべての便にETSを適用する方向で必要な手続きに入る。

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