EUは4日、危機対応を協議する会合を開き、新型コロナウイルス対策として、中国からの渡航者に陰性証明の提出を求めるよう加盟国に強く勧告することで合意した。ゼロコロナ政策が緩和された中国で感染者が急増していることを受け、既にイタリアやスペインなどは独自に水際対策を強化しており、EU全体で足並みを揃える狙いがある。
EU議長国スウェーデンが発表した文書によると、中国からEU加盟国に入国する渡航者に対し、出発前48時間以内に受けた検査の陰性証明の提出を求めるよう強く勧告する。また、中国とEUを結ぶ航空機の搭乗者に対し、医療用または高性能マスクの着用を求める。このほか、中国からの渡航者に対する新型コロナの無作為検査や、中国からの到着便や空港の排水検査の実施を加盟国に促した。
EUは今後、欧州疾病予防管理センター(ECDC)や各国の保健当局と連携しながら、EU内の疫学的状況や中国における感染拡大の動向を注視し、1月半ばに再び会合を開いて対応策を協議することで一致した。
EUの勧告を受け、ドイツ政府は5日、中国からの渡航者に対し、コロナ検査を義務付ける方針を明らかにした。DPA通信などによると、渡航者はドイツ入国前に少なくとも1回は抗原検査を受ける必要がある。早期に変異ウイルスを検出するため、空港では入国時に無作為検査も実施する。開始時期は未定だが、近く始める見通し。
スウェーデン、ベルギー、オーストリア、ギリシャも5日、中国からの渡航者に対し、コロナ検査を義務化する方針を発表した。欧州では12月末にイタリア、スペイン、フランス、英国が同様の方針を決めている。ただ、EU内では原則として国境検査なしで別の国に移動できるため、全ての加盟国が足並みを揃えない限り義務化の効果は期待できないとの見方もある。
ECDCは12月末、中国で流行が急拡大している変異ウイルスはすべてオミクロンの派生型で、EU内では既に高水準の免疫が獲得されているため、中国からの渡航者に対して検査や隔離などの措置を取ることは不適切との判断を示していた。しかし、中国政府が発表する観戦情報は透明性が低く、世界的に不信感が広がっている。また、1月下旬には春節に伴う大型連休が控えており、渡航者の増加による感染拡大を警戒する声が高まっていることから、EUは陰性証明の提示奨励などを決めた。