独エネルギー大手ユニパー、国有化が完了

ドイツ政府は12月22日、ロシアの天然ガス供給削減・停止で経営が悪化したエネルギー大手ユニパーへの出資手続きが完了したと発表した。臨時株主総会と欧州連合(EU)欧州委員会の承認を受けたことから、同社を国有化。天然ガスの国内安定供給を確保する。

ロシア国営の天然ガス大手ガスプロムは6月中旬、ガス管「ノルドストリーム1」の供給量を容量の40%へと削減した。ガスプロム最大の国外顧客であるユニパーはこの結果、契約量の40%しか供給を受けられなくなった。現在は供給が完全に停止されている。

ユニパーはこれを受け、極めて割高なスポット市場での代替調達を余儀なくされている。都市エネルギー公社などの顧客には従来の契約に基づき低価格で一定量を供給しなければならないことから、同社は巨額の損失を計上。損失額は時間とともに膨らんでいる。

天然ガス輸入最大手のユニパーが経営破たんすると国内のエネルギー安定供給が損なわれ市民生活と経済に甚大な影響が出ることから、政府は株式約99%を取得して国有化した。まずは80億ユーロを出資。出資額は最大で345億ユーロに引き上げられる。

欧州委は国有化を条件付きで承認した。国は2028年までに出資比率を25%プラス1株まで引き下げることを義務付けられている。この期限を延長する場合は同委の承認が必要となる。

ユニパーは多くの事業や保有株を26年末までに売却しなければならない。売却義務の対象には◇保有するロシア発電子会社ユニプロの株式84%◇独ダッテルン石炭発電所◇独地域熱事業◇北米の電力事業◇「ノルドストリーム1」と中欧・西欧の天然ガスパイプラインを結ぶ「OPALパイプライン」の保有株20%◇オランダと英国を結ぶ「BBLパイプライン」の保有株18%――などが含まれる。

同社はまた、会社存続ないし事業の脱炭素化に必要な場合を除いて買収を行うことを26年末まで禁じられる。さらに、石炭火力発電の廃止を決めたオランダを相手取った、エネルギー憲章条約の投資保護規定を根拠とする提訴の取り下げを義務付けられた。

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