EU統計局ユーロスタットが1月31日に発表した2022年10~12月期のユーロ圏の域内総生産(GDP、速報値)は、実質ベースで前期比0.1%増だった。予想されていたマイナス成長は避けられたものの、物価高、金融引き締めの影響で伸び率は前期の0.3%を下回った。ドイツとイタリアはマイナスとなった。(表参照)
成長率はこれまでに同期のGDP統計がまとまったEU12カ国のデータに基づいて算出された。ユーロ圏の前年同期比の成長率は1.9%で、前期の2.3%から鈍化した。EU全体では前期比がゼロ成長、前年同期比が1.8%増。前期はそれぞれ0.3%増、2.5%増だった。
ユーロ圏のプラス成長は7四半期連続。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰、インフレ率の急上昇や、これに対応した欧州中央銀行(ECB)による金融引き締めで、10~12月は0.1%程度のマイナスになるとの予測が多かった。
しかし、暖冬でエネルギー危機の影響が予想より少なく、各国政府が物価高を受けて家計支援を行ったことなどで、小幅ながらプラス成長を維持した。通年の成長率はユーロ圏が3.5%、EUが3.6%。
主要国の10~12月期はドイツが前期比0.2%減、イタリアが同0.1%減となり、マイナス成長に落ち込んだ。ドイツは個人消費の冷え込みが響いた。一方、フランスは0.1%増、スペインは0.2%増だった。
ユーロ圏は同期のマイナス成長転落を回避できた。ただ、アイルランドが低い法人税率を武器に多国籍企業の誘致を進めた効果で3.5%増と大きく伸びたことに支えられた面が大きい。アイルランドを除くとゼロ成長にとどまったとの見方も出ている。
物価の高止まり、ECBが今後も利上げを続けるのが確実となっていることで、今後も厳しい状況が続くのは必至だ。エコノミストの間では23年上期はマイナス成長になるとの観測が出ている。