欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/2/13

EU情報

EUがグリーン産業支援の方針で一致、「グリーンディール産業計画」を大筋で支持

この記事の要約

EUは9日の首脳会議で欧州企業の競争力強化に向けた産業政策について協議し、グリーンテックなど戦略的に重要な分野に対して「的を絞った、一時的かつ適切な支援」を行う必要があるとの認識で一致した。電気自動車(EV)購入支援策な […]

EUは9日の首脳会議で欧州企業の競争力強化に向けた産業政策について協議し、グリーンテックなど戦略的に重要な分野に対して「的を絞った、一時的かつ適切な支援」を行う必要があるとの認識で一致した。電気自動車(EV)購入支援策などを盛り込んだ米国のインフレ抑制法や、多額の補助金と緩い環境規制で企業誘致を強力に進める中国を念頭に、税額控除などを含む支援を可能にするため、EU国家補助規則の見直しを進めるほか、EU予算をより柔軟に活用できるよう、具体策の検討を急ぐことで合意した。

首脳会議では、欧州委員会が今月1日にインフレ削減法の対抗策として発表した、再生可能エネルギーやEVをはじめとするグリーン産業の競争力強化を目的とする「グリーンディール産業計画」が議論の土台となった。EUが世界に先駆けて2050年までに気候中立を実現するための成長戦略「欧州グリーンディール」の一環として、規制環境の改善や資金調達の支援強化通じて「ネットゼロ産業」(温室効果ガス排出の実質ゼロに貢献する産業)の振興を図るという内容。規制環境に関しては、域内にクリーンテクノロジー関連の生産拠点を新設する際の許認可手続きを簡素化することなどが柱。資金調達についてはEU国家補助規則を改正し、一定の条件の下で一時的にルールを緩和して、加盟国がネットゼロ産業に補助金を拠出しやすくする。

首脳会議の総括文書には「地政学的な現実に直面し、EUは長期的な競争力の維持と繁栄、世界市場での主導権確保に向けて断固として行動する」と明記。早急に取り組むべき課題として、国家補助ルールに関連した手続きの簡素化と迅速化、EUレベルでの効果的な資金調達支援の強化、重要な原材料の戦略的確保などを挙げた。

欧州委のフォンデアライエン委員長は会議後の記者会見で、3月22~23日に予定されるEU首脳会議までに、グリーンプロジェクトの許認可を迅速化する「ネットゼロ産業法案」と、原材料の調達先を多様化して中国などへの依存を低減するための「重要原材料法案」を策定する方針を明らかにした。