欧州銀行監督機構(EBA)は1月31日、EU域内の銀行が大きな負荷がかかる状況でも安定的に業務を継続できるか点検するストレステスト(健全性審査)を開始したと発表した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長引くなか、長期にわたり高インフレ・高金利が続く状況を想定し、銀行の健全性と耐久力を審査する。
欧州中央銀行(ECB)と連携して、域内の銀行資産の約75%を保有する計70行(ユーロ圏が57行)を対象に審査を実施する。2021年の前回テストでは50行が対象となった。EBAは7月末までに結果を公表する。
ストレステストでは評価期間を2023~25年の3年間とし、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、新型コロナウイルス感染再拡大を伴う地政学リスクの高まりを想定。高インフレで個人消費と投資に悪影響が及び、大幅な景気後退に陥って金融市場が不安定化した場合、銀行の財務にどのような影響が及ぶかに重点を置いて点検する。
「悪化シナリオ」では、25年までの3年間にEUの実質域内総生産(GDP)が6%縮小し(23年:3.5%減、24年:4.2%減、25年:1.6%増)、インフレ率は22年の9.0%から23年は9.7%に加速(24年は5.3%、25年は3.8%に鈍化)、長期金利は22年の2.15%から23年は5.9%に上昇した後、5%前後で推移する事態を想定する。
なお、ECBはユーロ圏のインフレ見通しについて、23年は6.3%、24年は3.4%に鈍化すると予測。実質成長率は23年の0.5%から24年は1.9%に加速するとみている。