欧州議会は2日の本会議で、インターネット上の政治広告に関する規則案を賛成多数で可決した。政治広告を取り扱う大手IT企業などに対し、広告の目的や手法、資金源に関する情報開示を義務付けるほか、ターゲティング広告のための個人データの使用を厳しく制限する。ロシアや中国を念頭に、政治広告の透明性を高めて選挙介入や世論操作を阻止する狙いがある。今回可決された規則案には欧州委員会の原案にいくつか修正が加えられているため、欧州議会は直ちに閣僚理事会との交渉に入り、2024年の欧州議会選挙までの新ルール導入を目指す。
規則案は欧州委が21年11月に発表していた。規制の対象となるのは米メタやグーグルをはじめとするIT大手やメディア、広告会社など。政党や立候補者のキャンペーンを目的とした広告の掲載にあたり、広告の趣旨やスポンサー、広告料金としていくら支払われたかなどを明示するよう義務付ける。
ユーザーの嗜好や行動パターンなどに基づいて配信するターゲティング広告に関して、欧州委は対象を絞り込むための手法について情報開示を義務付けると共に、人種や政治信条、宗教、性的指向といった機微(センシティブ)情報の利用を禁止するとしていた。これに対し、欧州議会の修正案は個人データの取り扱いについて、「オンライン政治広告のために明示的に提供された個人データのみ使用することができる」と厳格化。これにより、国勢調査や有権者の登録情報、クレジットカードの利用履歴などをもとに個々の有権者の嗜好や関心事を分析し、それぞれに適した方法で訴求する「マイクロターゲティング」は事実上不可能になる。また、未成年者の個人データについては全面的に使用を禁止する。
修正案にはこのほか◇EU域外に拠点を置く団体や個人がEU内で展開されるキャンペーンに資金提供することを禁止する◇すべてのオンライン政治広告と関連データを網羅するリポジトリを構築し、広告の資金源や規模、ターゲット層と使用された個人データの種類、ルール違反による広告掲載停止などの情報にアクセスしやすくする◇重大かつ組織的な違反があった場合、大規模プロバイダは当該顧客に対して15日間サービスを停止しなければならない――などが盛り込まれている。