欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/3/6

EU情報

欧州委が運転免許制度の改正案発表、「ビジョンゼロ」達成に向け

この記事の要約

欧州委員会は1日、交通事故削減に向けた取り組みの一環として、ベテランドライバーの同乗を条件とする免許付与や、EU全域で有効なデジタル運転免許証の導入などを柱とする運転免許制度の改正案を発表した。EUは2050年までに域内 […]

欧州委員会は1日、交通事故削減に向けた取り組みの一環として、ベテランドライバーの同乗を条件とする免許付与や、EU全域で有効なデジタル運転免許証の導入などを柱とする運転免許制度の改正案を発表した。EUは2050年までに域内全体で交通事故による死者をゼロに近づける「ビジョンゼロ」構想を掲げており、運転免許に関するルールを近代化して目標の達成を目指す。今後、欧州議会と閣僚理事会で議論する。

欧州委によると、EU域内では2022年に交通事故で2万人以上の命が失われ、犠牲者の多くが歩行者と自転車やバイクの利用者だった。一方、30歳未満のドライバーは全体の8%にとどまるのに対し、死亡事故の40%がこの年齢層によるものだった。欧州委はこうした実態や、予想されるゼロエミッション車の普及、コロナ禍やウクライナでの戦争に伴うトラック運転手の不足といった現状を踏まえ、既に一部の加盟国で導入されている制度やルールを参考に今回の改正案をまとめた。

運転免許に関しては◇免許取得後少なくとも2年間の試用期間を設け、その間は飲酒運転防止のための「ゼロトレランス(血中アルコール濃度ゼロ%)」ルールを適用する◇若いドライバーが早期に運転経験を積むため、17歳から付き添いの同乗を条件に普通自動車とトラックの免許を取得できる制度を導入し、18歳の誕生日から単独で運転できるようにする(ドライバーとして働くことが可能)◇EU全域で有効なデジタル運転免許証を導入し、発行や更新などすべての手続きをオンライン化する◇ゼロエミッション車への移行を踏まえ、運転免許試験に高度運転支援システムをはじめとする運転技術に関する知識や技能の評価項目を盛り込む―― などを提案している。

一方、国境をまたぐ交通犯罪に対する取り締まりを強化するため、各国当局がすべての加盟国の運転免許登録簿にアクセスできるようにする。欧州委によると、国境を越えた交通犯罪ではこれまで違反者が特定されないケースが多く、19年は約40%が不処罰となっている。

また、重大な違反を理由に加盟国が運転免許の取り消しを決定した場合、EU全域で運転者の資格を剥奪できる制度を導入する。死亡事故につながりかねないスピード違反、アルコールや薬物の影響下での運転などが対象となる。