欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/4/17

EU情報

加盟国がFガスとオゾン層破壊物質の規制強化で合意、欧州議会と交渉へ

この記事の要約

EU加盟国は5日開いた閣僚理事会で、冷蔵庫やエアコンなどに使用されるフッ素化ガス(Fガス)と、オゾン層破壊物質(ODS)の規制強化に向けた規則案の内容で合意した。すでに欧州議会は3月末に2つの規則案を採択しているが、閣僚 […]

EU加盟国は5日開いた閣僚理事会で、冷蔵庫やエアコンなどに使用されるフッ素化ガス(Fガス)と、オゾン層破壊物質(ODS)の規制強化に向けた規則案の内容で合意した。すでに欧州議会は3月末に2つの規則案を採択しているが、閣僚理は今回、欧州委員会の原案を一部緩和する修正案で合意しており、両機関は最終的な合意形成に向けて近く交渉に入る。

Fガスはオゾン層破壊物質の代替として主に冷媒や断熱材として普及しており、冷蔵庫、エアコン、電気機器、消火器など幅広い製品に使用されている。しかし、温暖化効果が二酸化炭素(CO2)の2万倍を超え、Fガスを用いた製品の製造・使用・廃棄の各段階で大気中に漏れ出す難点もある。欧州委は2022年4月、50年までの気候中立を目指す欧州グリーンディールの一環として、現行のFガスおよびODS規則の改正案を発表。欧州議会と閣僚理で討議されていた。

Fガス規則の改正案は、Fガスの約9割を占めるハイドロフルオロカーボン類(HFC)に対する規制を強化し、EU域内で販売される製品への使用を50年までに15年比で97.6%削減することが柱。一部のカテゴリではFガスを使用した製品の販売を完全に禁止するほか、代替物質を使用できない場合に限って新製品でのFガス使用を認め、監視と取り締まりを強化することなどが盛り込まれている。欧州委は規制強化により、CO2換算で30年までに4,000万トン、50年までに3億1,000万トンの温室効果ガスを追加的に削減できると試算している。

欧州議会では50年までに域内を流通するHFCをゼロにする修正案が採択されたのに対し、閣僚理では再生可能エネルギー技術の1つで、EUがロシア産化石燃料依存からの脱却計画「リパワーEU」で普及促進を目標に掲げるヒートポンプ(少ないエネルギーで低温の熱源から熱を集めて高温の熱源へ送り込む装置)の扱いが焦点となった。加盟国は最終的に、ヒートポンプへのHFCの使用禁止を先送りするとともに(タイプにより25年1月または30年1月)、規制強化でリパワーEUの目標達成が危ぶまれる場合、欧州委の権限でヒートポンプに使用されるHFCの割り当てを追加できるようにすることで合意した。

一方、ODSに関しては、すでに現行規則で大部分の生産・販売・使用が禁止されており、改正案では過去に販売された製品からのODSの排出削減に重点が置かれている。具体的には建物の改修・解体に際し、断熱材からODSを回収または廃棄を義務付けることなどにより、50年までにCO2換算で1億8,000万トン、オゾン破壊係数で3万2,000トン相当のODS排出を防止する。