欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/5/22

EU情報

EUの暗号資産規制、加盟国が正式承認

この記事の要約

EUは16日開いた財務相理事会で、暗号資産(仮想通貨)に関する包括的な規制である「暗号資産市場(MiCA)規則案」を正式に承認した。暗号資産に関する関心が高まる中、金融システムの安定性を維持し、投資家を保護すると同時に金 […]

EUは16日開いた財務相理事会で、暗号資産(仮想通貨)に関する包括的な規制である「暗号資産市場(MiCA)規則案」を正式に承認した。暗号資産に関する関心が高まる中、金融システムの安定性を維持し、投資家を保護すると同時に金融犯罪を防止するのが狙い。世界的にみて暗号資産に関する包括的なルールは整備されておらず、EUの新規則が米国などでの議論に影響を与える可能性がある。

MiCA規則案は、暗号資産市場の一体性を保護するための包括的な枠組みとして、欧州委員会が2020年9月に発表した。欧州議会は4月の本会議で規則案を可決しており、閣僚理の正式承認を以って法制化プロセスが完了した。

新規則は暗号資産関連のサービスを提供する事業者に対し、加盟国の規制当局から事業免許の取得を義務付けることなどを柱とする内容。暗号資産の発行事業者のほか、顧客の暗号資産を保管する事業者や、暗号資産の取引プラットフォームなどを含む、暗号資産関連サービスのプロバイダー(CASP)が規制の対象となる。

米ドルやユーロなどの法定通貨に裏付けされた「ステーブルコイン」に関しては、発行者を欧州銀行監督局(EBA)の監督下に置き、十分に流動性のある準備金を積み立てるよう義務付ける。ステーブルコインの保有者には、いつでも無料で資金の返還を請求できる権利を与え、消費者保護を徹底させる。

新規則には市場操作やマネーロンダリング(資金洗浄)、テロ資金調達、その他の犯罪行為を防止するための対策が盛り込まれている。資金洗浄対策として、欧州証券市場監督機構(ESMA)は当局の認可を得ずに域内で活動する事業者向けの登録簿を立ち上げ、監視体制を強化する。

一方、財務相理では「租税分野の行政協力に関する指令(DAC)」の改正案でも合意に達した。「DAC8」と呼ばれる今回の改正では、新たに暗号資産サービスプロバイダー(CASP)を規制の対象とし、取引情報の報告と税務当局との情報交換を義務付けることが柱。暗号資産からの収入に対する監視体制を強化し、脱税や租税回避、虚偽申告などの違法行為を防ぐのが狙いだ。

DAC改正案は欧州議会の諮問を経て(諮問手続きに基づく欧州議会の意見に拘束力はない)、閣僚理が全会一致で承認する必要がある。