欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2023/5/29

EU情報

EUの「永遠の化学物質」規制案、独機械業界が批判

この記事の要約

EUが永遠に残る化学物質と呼ばれるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の利用を原則する禁止方向で検討していることについて、ドイツの機械業界が批判している。規制案が無修正で施行されると、製 […]

EUが永遠に残る化学物質と呼ばれるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の利用を原則する禁止方向で検討していることについて、ドイツの機械業界が批判している。規制案が無修正で施行されると、製造業全般に深刻な影響が出ると懸念しているためだ。同案への批判はすでに、PFASを製造する化学業界から出ていたが、ユーザー業界にも憂慮が広がっている。

PFASは高い耐熱性、耐候性、耐薬品性、潤滑性、電気絶縁性などを持つ多様な化学物質の総称。炭素原子とフッ素原子が非常に強く結合しているため、自然界では分解されず、人体や環境中に長く残ることから「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれている。

ドイツなど欧州5カ国は1月、PFASが環境に有害であるだけでなく、がんやホルモン機能障害、免疫不全を引き起こすとして、禁止する法原案を欧州化学物質庁(ECHA)に提出した。約1万種類に上るPFASの利用を段階的に禁止するという内容だ。

具体的には、代替物質確保の難易度に応じて、企業に18カ月~12年の猶予期間を与えて段階的に禁止する。医薬品、殺菌剤などに使われるPFASのうち、すでに厳しい規制が導入されているものについては禁止の例外とすることも提案している。26年または27年の施行を目指している。

PFASは半導体、自動車、バッテリー、医療機器など幅広い製品に使われる。5カ国はPFASを放置すると、利用が毎年10%のペースで増加し、環境、人体への悪影響が続くとして、EUに早期に規制に乗り出すよう求めている。

5カ国の提案は、ECHAがEUの化学物質規制「化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則(REACH)」との整合性審査を通過する必要がある。審査には1年以上がかかる見通し。審査が終わればECHAが欧州委員会に意見書を提出する。欧州委が規制は必要と判断すれば、EUレベルの正式な法案をまとめる作業に着手し、EU加盟国の承認を経て発効となる。

同案に対しドイツ機械工業連盟(VDMA)は23日に声明を発表。環境・持続可能性分野の責任者であるサラ・ブリュックナー氏は、「これら1万種類の物質の科学的に裏付けられたリスク評価は行われていない。(それにもかかわらず)すべてが単純一律に禁止されることになる」と批判した。各PFAS物質の特性や投入分野を踏まえた入念周到な規制にすることを求めている。例えば、機械の内部にとどまり外部との接触がないPFAS製品であれば、禁止対象から除外されるべきとの立場だ。経済協力開発機構(OECD)が「低懸念ポリマー(polymer of low concern)」に分類するPFAS物質についても規制の対象から除外するよう要求している。

VDMAは、PFAS物質の利用が幅広く禁止されると、燃料電池やヒートポンプ、ソーラーパネルなども製造できなくなり、脱炭素に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)にも大きな支障が出ると指摘。政策当事者に注意を促した。