欧州委がサステナブル金融促進策発表、ESMAがESG評価機関を認可・監督へ

欧州委員会は13日、持続可能な経済への移行を実現するためのサステナブルファイナンスの枠組みを強化する新たなパッケージを発表した。環境・社会・ガバナンス(ESG)投資を促進するため、環境問題の解決に貢献する持続可能な経済活動の分類基準「タクソノミー」について、新たに気候以外の4分野の活動に関して細則を定めた委任規則を導入する。また、サステナブル投資市場の透明性を高めるため、ESG評価機関に対する規制を導入し、欧州証券市場監督機構(ESMA)の認可取得を義務付ける。

EUは2050年の気候中立に向け、温室効果ガス排出量を30年までに1990年比で少なくとも55%削減する目標を掲げており、そのため年間3,500億ユーロの追加投資が必要とされる。欧州委は公的支出に加えて民間投資を呼び込むための環境整備を進めており、EUタクソノミーの開発もそうした取り組みの一環。

欧州委は20年6月に採択された「タクソノミー規則」に基づき、経済活動の持続可能性を判断するための6つの環境目標のうち、「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」についてはすでに委任規則の適用を開始している。今回はそれ以外の4分野――水と海洋資源の持続可能な利用および保護◇廃棄物対策や再生資源の利用促進などを軸とする循環型経済への移行◇汚染対策◇生物多様性と生態系の保全・回復――をカバーしている。欧州議会と閣僚理事会から反対意見が出なければ、24年1月1日から新たな委任規則の適用を開始する。

新たな委任規則では8つの産業分野――環境保護・修復活動、製造業、上下水道・廃棄物処理、建設・不動産、災害リスク管理、情報・通信、サービス、宿泊業――の35の経済活動をグリーン投資の対象となる事業のリストに加えた。

また、気候変動の緩和と気候変動への適応に貢献する経済活動の評価基準を見直し、新たに輸送、専門的・科学的・技術的活動など6つの産業分野の12の活動をグリーンリストに加えた。さらに気候変動の緩和への貢献が期待できる航空分野の経済活動を「過渡的」活動と位置づけ、持続可能な航空燃料(SAF)の導入を促進するほか、ゼロエミッション技術の開発や次世代航空機の製造と導入にインセンティブを与え、最も燃料効率の高い機体への置き換えを促す。

一方、ESG投資が拡大するとともに、それを支えるESG評価機関の重要性も高まっているが、評価の透明性と公平性、ガバナンスと中立性などの課題が指摘されている。このため欧州委は認可制を導入してESG評価機関をESMAの監督下に置くとともに、潜在的な利益相反を避けるため、投資家へのコンサルティングサービスや信用格付けの販売、ベンチマークの開発などの停止を求める内容の規則案を打ち出した。違反した場合は年間売上高の最大10%の罰金が科される可能性がある。今後、欧州議会と閣僚理事会で規則案について討議する。

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