オーストリア通信最大手テレコム・オーストリアの大株主であるメキシコ通信大手アメリカ・モビルとオーストリア政府系の持ち株会社OIAGは23日、株主協定締結で合意したと発表した。これによってアメリカ・モビルはテレコム・オーストリアの実質的な経営金を握る。
世界的大富豪カルロス・スリム氏が率いるアメリカ・モビルは2012年、テレコム・オーストリアに21%を出資した。その後に株式を買い増し、現在は26.4%を出資している。OIAGの持ち株比率は28.4%。
合意によると、両社は持ち株を統合することで、共同で出資比率を50%以上に引き上げる。さらに、アメリカ・モビルが株式公開買い付け(TOB)を実施して残る株式を取得するほか、テレコム・オーストリアが海外事業拡大にため実施する10億ユーロの増資を引き受けることで、単独で過半数の株式を握る。
OIAGは今後も、テレコム・オーストリアをめぐる重要提案の阻止に必要な株式25%プラス1株を保有するほか、最高経営責任者(CEO)と監査役会議長の任命権を持つ。
アメリカ・モビルは本国メキシコなど中南米の通信規制強化と競争激化を受けて、欧州進出を図っている。昨年には30%を出資するオランダ通信最大手KPNの買収に乗り出したが、失敗した経緯がある。テレコム・オーストリアの経営権確保によって、欧州での事業基盤を強化したことになる。
オーストリア政府は、アメリカ・モビルの出資拡大がテレコム・オーストリアの中東欧事業拡大に寄与するとして、今回の合意に踏み切った。