欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/2

EUその他

ノバルティスとGSKの事業交換、条件付きで認可

この記事の要約

欧州委員会は1月28日、スイス製薬大手のノバルティスと同業の英グラクソ・スミスクライン(GSK)が相互に事業を取得する計画を条件付きで認可したと発表した。欧州委は一連の取引を認めた場合、抗がん剤やワクチンなどの分野で公正 […]

欧州委員会は1月28日、スイス製薬大手のノバルティスと同業の英グラクソ・スミスクライン(GSK)が相互に事業を取得する計画を条件付きで認可したと発表した。欧州委は一連の取引を認めた場合、抗がん剤やワクチンなどの分野で公正な競争が阻害される恐れがあるとして計画の見直しを求めていた。両社が一部事業の売却や供給に関する取り決めなどに同意したため、競争上の懸念は払拭されたとして取引を承認した。

ノバルティスは昨年4月、大規模な事業再編策として、GSKから抗がん剤事業を最大160億ドルで取得する代わりに、ワクチン事業(インフルエンザ用ワクチンを除く)を71億ドルでGSKに売却することで合意。さらに両社はそれぞれの大衆薬事業を統合し、合弁会社(GSKが63.5%出資)を設立することでも合意した。合弁会社は売上高が約100億ドルに上り、米ヘルスケア用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)に次ぐ世界2位の大衆薬メーカーとなる。

欧州委は抗がん剤事業でスイスのロシュに次ぐ世界2位のノバルティスがGSKの同事業を取得した場合、一部の領域で競争とイノベーションが阻害される恐れがあると指摘。また、ワクチン事業と大衆薬事業に関しては、両社の取引を認めた場合、いくつかの分野でGSKの強力な競争相手が排除されることになり、価格上昇などの弊害が生じる可能性があると警告していた。

欧州委の懸念に対応するため、ノバルティスは皮膚がんの中で最も悪性度の高い悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬「MEK162」に関連した権利をライセンサーであるアレー・バイオファーマに返却すると共に、もう1つのメラノーマ治療薬「LGX818」の事業もアレー社に譲渡する方針を打ち出した。

一方、GSKはワクチン事業に関して、細菌性髄膜炎の予防ワクチン「Mencevax」を売却すると共に、同じく細菌性髄膜炎用の「Nimenrix」については世界規模で独占的かつ永続的なライセンス契約を結ぶことなどに同意した。さらに大衆薬の分野では、禁煙補助剤「NiQuitin」、インフルエンザ治療薬「Coldrex」などの事業を売却する。