欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/2/9

EU産業・貿易

多国籍企業に対する税優遇措置、ベルギーも欧州委の調査対象に

この記事の要約

欧州委員会は3日、多国籍企業を対象としたベルギーの税優遇措置がEU法で禁止している違法な国家補助にあたる可能性があるとして、本格調査を開始したと発表した。欧州委はこれまでにルクセンブルク、アイルランド、オランダの税務当局 […]

欧州委員会は3日、多国籍企業を対象としたベルギーの税優遇措置がEU法で禁止している違法な国家補助にあたる可能性があるとして、本格調査を開始したと発表した。欧州委はこれまでにルクセンブルク、アイルランド、オランダの税務当局が多国籍企業と結んだ課税措置に関する取り決めについて調査を進めており、ベルギーが4カ国目。企業誘致や雇用創出の見返りとして一部の加盟国が導入している租税軽減措置に関する調査を拡大し、国際的に批判が高まっている多国籍企業による課税逃れの問題にEUとして対処する。

欧州委が問題視しているのは、ベルギー当局が多国籍企業に対して適用している「超過利益(excess profit)」に関する事前裁定制度。これは多国籍企業に属する企業がグループ内取引により、独立した企業としての取引より大きな利益を得た場合に超過分を非課税とすることができるシステムで、多国籍企業に属することによって得られるメリットを考慮した制度になっている。グループ企業に属する企業と独立した企業ではコスト構造やリスクなどが大きく異なり、多国籍企業に属する企業は規模の利益、ノウハウ、市場アクセス、評判など多くの面でメリットを享受できる。

しかし、多国籍企業グループに属する個々の企業がどの程度のメリットを受けているかを算出することは実質的に不可能であるため、企業単体としての取引によって発生する利益に対してのみ課税する「独立企業原則」に基づき、ベルギーに拠点を置くグループ企業には事前の申請を条件に、大幅な税額控除が認められている。

欧州委によると、ベルギーではこうした制度によって多国籍企業に属する企業が計上する利益の通常50%以上が控除の対象となっており、この比率が最大90%に上るケースもあるという。フェスターガー委員(競争政策担当)は「超過利益を非課税とするベルギーの税制は特定の多国籍企業のみを対象としたもので、公正な競争を著しく歪めている可能性がある。すべての企業に対して公平な税負担を求めるため、同国の税制について詳細に調査する必要がある」と説明している。

こうしたなか、欧州議会の各会派は5日、欧州委とは別に、多国籍企業に対する税優遇措置について独自に調査を行う臨時調査委員会を設置することで合意した。欧州緑の党が先月半ばまでに委員会の設置要求に必要な議員の4分の1以上の署名を集め、主要会派の代表に判断が委ねられていた。欧州議会では今週中に調査委設置の是非について採決が行われる見通しだ。