欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/9

EU産業・貿易

EBAがボーナス規制の新運用指針公表、規制対象の定義や範囲を明確化

この記事の要約

欧州銀行監督機構(EBA)は4日、EU域内の銀行を対象とする賞与(ボーナス)規制の運用ルールを定めた新たな指針案を公表した。英国に拠点を置く大手行を中心に、人材流出を懸念する多くの銀行が幹部行員にさまざまな形の「手当」を […]

欧州銀行監督機構(EBA)は4日、EU域内の銀行を対象とする賞与(ボーナス)規制の運用ルールを定めた新たな指針案を公表した。英国に拠点を置く大手行を中心に、人材流出を懸念する多くの銀行が幹部行員にさまざまな形の「手当」を支給している現状を踏まえ、規制をより実効性のあるものにするため、固定給の定義や適用範囲を明確に定めている。EBAは6月4日まで意見募集を行い、年内に最終案をまとめる。

EUは銀行の短期業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどの過度なリスクテイクを助長し、金融危機を招く一因になったとの反省から、2014年1月に賞与規制を導入した。域内に本社や現地法人を置くすべての銀行の取締役、上級管理職、トレーダーなどを対象に、ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額に制限するという内容で、株主の承認がある場合は年間給与の最大2倍が上限となる。

しかし、14年の業績に基づいて支払われる今年度のボーナスから新規制が適用されるのを前に、英銀大手バークレイズやHSBCホールディングスなどの有力行は、給与とは別に規制対象とならない定額報酬として諸手当を支給していた。EBAはこうした慣行を問題視する欧州委員会の要請を受けて実態調査を行い、昨年10月、域内で活動する39の大手銀行が幹部行員に「役職に連動する手当」を支給することで「EUの規制をすり抜けている」との報告書を公表。新たな指針はこの報告書を基に策定された。

まず、大手行が導入している役職ベースの手当について、銀行側は職務や勤務年数などに基づく報酬はボーナスのような能力給とは異なるため、固定給に該当すると主張しているが、EBAは固定給を「永続的で予め決められた、取り消し不可能ですべての従業員に対して透明な報酬」と定義。役職ベースの手当は大部分が「自由裁量的で取り消し可能」な報酬であるため、賞与規制の対象となる「変動給」に分類されると説明している。

一方、規制の対象に関しては、域内に拠点を置くすべての銀行(規模を問わず)に加え、その子会社にも共通ルールが適用される。ただし、ボーナスの少なくも40%(高額の場合は60%)の支給を最低3年繰り延べなければならないとの規定に関しては、一定の条件下で規模の小さい銀行や、変動報酬の支給比率が低い銀行への適用が免除される。

各国当局は16年前半に支払われるボーナスから新たな指針に沿って規制を適用することが義務づけられる。適用できない場合はEBAに理由を説明しなければならず、正当な理由がない場合、EBAは欧州司法裁判所に当該国を提訴する可能性がある。