欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/30

EU産業・貿易

欧州委がICTやメディアの規制・制度改革提言、デジタル単一市場創設に向け

この記事の要約

欧州委員会は25日、デジタル単一市場の創設に向けてEUが取り組むべき優先課題をまとめた政策文書を公表した。EUが成長戦略の柱と位置付ける高速インターネットを基盤とする経済活動(デジタル経済)を活性化させるため、電気通信、 […]

欧州委員会は25日、デジタル単一市場の創設に向けてEUが取り組むべき優先課題をまとめた政策文書を公表した。EUが成長戦略の柱と位置付ける高速インターネットを基盤とする経済活動(デジタル経済)を活性化させるため、電気通信、情報技術(IT)、メディアなどの分野で国ごと異なる規制や制度を見直し、国境を越えたサービスやコンテンツ流通を妨げる障壁を取り除くことに重点を置いた内容になっている。欧州委は今回の文書をたたき台に、5月末までにデジタル市場の統合に向けた包括戦略をまとめる。

欧州委によると、EU内では約3億1,500万人が毎日インターネットを利用しており、昨年はほぼ半数のEU市民がオンラインショッピングを利用したが、域内の他の国の事業者から商品やサービスを購入した消費者はこのうち15%にとどまった。これは配送料がかさむことや、小売業者が地理的制限(geoblocking)を設けて国外の消費者がサービスを利用できないようにしたり、居住する国のサイトに誘導して同じ商品を高い値段で販売していることなどが背景。また、国によって異なる著作権制度のため国境を越えたコンテンツ流通が阻害され、アーティストやコンテンツ制作者と消費者の双方にとって不利益な状況が生じている。欧州委は域内の複数の国で事業展開する中小企業が全体の7%にとどまる点を特に問題視し、消費者と事業者の双方がオンラインサービスにアクセスしやすくするため、国境をまたいだ電子商取引を妨げるあらゆる障壁を取り除く必要があると指摘している。

一方、高速ブロードバンド網やモバイル通信網の整備もデジタル経済の活性化に不可欠な要素だ。欧州委によると、超高速回線(30Mbps以上)を使用している域内のインターネットユーザーは全体の21.8%にとどまり、次世代のモバイル通信規格である4Gへの対応でも米国や日本などと比べて大きく遅れをとっている。さらにネットユーザーの72%がオンライン上における個人情報の取り扱いに不安を感じており、欧州委は電子商取引や各種オンラインサービスの利用促進に向けて個人情報保護ルールの強化が必要と指摘している。このほか周波数管理の枠組みを見直し、EUレベルで合理的かつ効果的に周波数を使用できるようにすることも提案している。

欧州委のアンシプ委員(デジタル単一市場担当)は「オンライン上のあらゆる障壁を取り除き、オフラインと同様に国境をまたいで自由にモノやサービスにアクセスできるようにしなければならない。デジタル時代の恩恵を享受できるよう、道のりは厳しいがEUとして野心的に取り組む必要がある」とコメントしている。