欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/30

EU産業・貿易

欧州委が電子商取引の実態調査へ、国境をまたぐ取引の障壁が焦点に

この記事の要約

欧州委員会のフェスターガー委員(競争政策担当)は26日、EU域内の電子商取引について、競争法の観点から調査を実施する方針を明らかにした。EU市場では幅広い分野でインターネットを介した商取引が急速に拡大しているが、一部で国 […]

欧州委員会のフェスターガー委員(競争政策担当)は26日、EU域内の電子商取引について、競争法の観点から調査を実施する方針を明らかにした。EU市場では幅広い分野でインターネットを介した商取引が急速に拡大しているが、一部で国境をまたいだ取引を制限する動きがみられることから、すべての加盟国を対象に実態調査を行い、デジタル経済の成長を阻害する障壁を特定する。数週間以内に調査方針が正式発表される見通しだ。

フェスターガー委員はベルリンで開かれた会議で調査について言及した。デンマークの前経済相である同委員は自身が加入しているサービスを例に挙げ、「コペンハーゲンでは好きなデンマークのテレビ番組をタブレット端末で視聴できるのに、ブリュッセルではこのサービスを利用できない」と発言。さらに、フランスの消費者が自宅からオンラインでイタリア製の靴を購入する場合、自動的にフランス版のウェブサイトに誘導され、そこには現地より高い値段が表示されているといったケースに触れ、地理的制限(geoblocking)によって国外の消費者が差別的な扱いを受けている現状を問題視した。

フェスターガー委員によると、欧州委は5月をめどに広範な調査を開始し、約1年をかけて実態把握に努める。調査対象は電子商取引を展開する小売業者や製造業者、放送事業者、動画や音楽などのコンテンツ配信サービス、価格比較サイトなど多岐にわたる見通し。国境をまたぐ電子商取引で競争制限的な行為が確認された場合、第2段階として特定の事業者に対する個別調査に移る。

欧州委によると、昨年はほぼ半数のEU市民がオンラインショッピングを利用したが、域内の他の国の事業者から商品やサービスを購入した消費者はこのうち15%にとどまった。フェスターガー委員は「電子商取引はデジタル単一市場の極めて重要な部分であり、あらゆる障壁を取り除くべき時がきた」と強調している。