欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/11

EU産業・貿易

「国際投資裁判所」の設立、欧州委が呼びかけ

この記事の要約

欧州委員会は5日、自由貿易協定(FTA)で争点となっている国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)制度をめぐり、紛争を解決するための国際的な仲裁裁判所の設立を呼びかけた。 ISDSは投資家が投資相手国の対応によって不利益を […]

欧州委員会は5日、自由貿易協定(FTA)で争点となっている国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)制度をめぐり、紛争を解決するための国際的な仲裁裁判所の設立を呼びかけた。

ISDSは投資家が投資相手国の対応によって不利益を被った場合に、相手国政府に対して訴訟を起こすことを可能にするものだが、多国籍企業の利益擁護の手段として乱用される危険性も指摘されている。EUが米国との間で交渉を進めている環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)や、日本や米国など12カ国が参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉でも、ISDSは大きな争点となっている。

欧州委は5日発表したコンセプトペーパーの中で、国際投資仲裁における上訴メカニズムの設定や仲裁人の拘束名簿制度の導入の必要性を指摘したうえで、常設の国際投資裁判所の創設を目指すべきだとの認識を示した。この裁判所は参加の意思を表示するプトイン方式に基づき、国際的な独立機関あるいは既存の政府間国際機関の下に置かれるとしている。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は、現行の投資家保護制度は21世紀の実情に即していないと指摘。対外投資でも外国投資受け入れ額でも世界最大であるEUが、投資紛争解決制度の改革を主導し、グローバル規模のより優れたルールのためのビジョンを提示することは理にかなっていると述べた。