欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/11

EU産業・貿易

マクドナルドにも税逃れ疑惑、欧州委が調査を検討

この記事の要約

欧州委員会のフェスターガー委員(競争政策担当)は5日、欧州議会の特別委員会で多国籍企業による課税逃れをめぐる調査の進捗について報告を行い、新たに米マクドナルドに対する調査を検討していることを明らかにした。同社はルクセンブ […]

欧州委員会のフェスターガー委員(競争政策担当)は5日、欧州議会の特別委員会で多国籍企業による課税逃れをめぐる調査の進捗について報告を行い、新たに米マクドナルドに対する調査を検討していることを明らかにした。同社はルクセンブルクの優遇税制を利用して、欧州で10億ユーロを超える税金の支払いを免れた疑いが指摘されている。一方、ヴェスタエアー委員は一部の加盟国が米アップルなどに適用してきた税優遇措置をめぐる調査に関して、当初の期限としていた6月末までに違法性の判断を下すことは難しいとの認識を示した。

欧米に拠点を置く複数の労働組合と英国の非政府組織(NGO)は2月、マクドナルドが課税逃れのため、2009年から13年にかけてフランスやドイツなど欧州主要市場の売上高を、ルクセンブルクにある子会社の売り上げとして計上していたとする報告書を公表した。それによると、同社が5年間に計上した売上高は約37億ユーロだったのに対して、納めた税金はわずか1,600万ユーロだった。欧州委員会は労組の申し立てを受け、ルクセンブルク当局に情報提供を求めるなど、事実関係の解明を進めていた。

ヴェスタエアー委員は欧州議会が新たに立ち上げた税制に関する特別委員会で「労組から提供された情報をもとに、マクドナルドに対する調査を開始すべきかどうか検討している」と発言。「世界中のあらゆる事案について調査を行うことは不可能だが、特に疑わしいケースを特定することはできる」と付け加えた。

一方、同委員は欧州委が調査を進めているアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの課税措置について、最終的な結論を出すのは7月以降にずれ込むとの見通しを明らかにした。欧州委は加盟国が多国籍企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、昨年6月にアップルに対するアイルランド、米スターバックスに対するオランダ、米アマゾンと伊フィアットの金融子会社に対するルクセンブルクの措置について調査を開始。12月にはすべてのEU加盟国に対し、「タックスルーリング」と呼ばれる課税措置に関する企業との取り決めについて詳しい情報提供を要請した。さらに今年2月には、ベルギーが多国籍企業に適用している法人税の優遇制度についても本格調査に乗り出している。