欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/18

総合 – 欧州経済ニュース

欧州委、雇用と成長に向け一層の努力要求=経済政策年次提言

この記事の要約

欧州委員会は13日、EU加盟国の経済政策に関する年次提言を発表し、雇用創出と経済成長の促進に向け一段と努力するよう各加盟国に求めた。 提言は、EUの支援プログラム下にあるギリシャとキプロスを除く26の加盟国を対象とする。 […]

欧州委員会は13日、EU加盟国の経済政策に関する年次提言を発表し、雇用創出と経済成長の促進に向け一段と努力するよう各加盟国に求めた。

提言は、EUの支援プログラム下にあるギリシャとキプロスを除く26の加盟国を対象とする。欧州委はこの中で、フランス、イタリア、ポルトガル、ブルガリアおよびクロアチアについて、高水準の公的債務、硬直した労働市場、輸出市場シェアの低下など、「過度の経済不均衡」が見られると指摘。断固たる是正措置をとるよう求めるとともに、取り組みを監視していく方針を示した。

フランスに対しては、2017年までに財政赤字をEUの基準の上限である対国内総生産(GDP)比3.0%まで削減できるよう、改革の実行を要請。「景気が改善している今こそ改革を継続することが重要」とし、法人減税を通じて企業の投資を促すことや賃金制度改革、医療分野の規制緩和、失業手当の減額による就労促進などを実現するよう求めた。

イタリアについては、銀行が抱える不良債権処理を加速するため、年内に措置を講じるよう求めたほか、国有資産の売却を早期に実施し債務削減につなげるべきだとの見解を示した。また、予定されている構造改革を支援するため、財政再建ペースの緩和を容認。構造的財政赤字を対GDP比で今年は0.25%、来年は0.1%それぞれ削減することとした。EUのルールでは本来、財政が均衡するまで構造的財政赤字を毎年0.5%改善することが求められている。

フィンランドは今年の財政赤字がGDP比で3.3%、来年は3.2%と予想されており、EU財政赤字基準を達成できない可能性が高い。欧州委は、フィンランドを代表する企業であるノキアの低迷や重要な輸出相手国であるロシア経済の不振、紙・パルプなど主要産業の落ち込みなどがフィンランド経済の低迷を招いていると分析したうえで、同国に対する過剰財政赤字手続きを開始するかを今後数週間以内に決定する意向を示した。

一方、ドイツは2019年まで対GDP比で0.25~0.75%の構造的黒字が続く見通しで、公的債務は19年までに対GDP比61.5%まで減少すると予想されている。欧州委は同国の財政改善は「投資拡大への余地を生んでいる」と指摘した。EUの政策決定者の間では、ドイツの支出拡大はEU全体の需要、成長の押し上げに寄与するとの期待が強い。