欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/18

総合 – 欧州経済ニュース

ユーロ圏財務相会合、ギリシャの融資再開見送り

この記事の要約

ユーロ圏19カ国は11日、ブリュッセルで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議した。会合後の共同声明によると、ギリシャの財政改革をめぐる話し合いは「進展した」ものの、なお双方の主張に隔たりがあり、EUによる […]

ユーロ圏19カ国は11日、ブリュッセルで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議した。会合後の共同声明によると、ギリシャの財政改革をめぐる話し合いは「進展した」ものの、なお双方の主張に隔たりがあり、EUによる同国への融資再開は見送られた。

債務危機に陥ったギリシャは2010年から12年にかけて、EUと国際通貨基金(IMF)から総額2,400億ユーロの緊急金融支援を取り付けた。このうち1,300億ユーロに上る第2次支援は、1月に発足したギリシャの新政権が支援の条件として約束していた緊縮策を柱とする財政再建を放棄する方針を打ち出したことから凍結されており、同国は残る72億ユーロの融資を受け取ることができない状態にある。

ギリシャとEUは2月下旬、同月末が期限だった金融支援を4カ月延長することで合意したが、条件としてギリシャは現行支援の枠組みに沿った財政改革を進めなければならない。当初は4月末までに詳細を固め、正式承認を受ける予定だったが、協議は難航している。

財政改革案をめぐっては、ギリシャ政府は富裕層への増税、脱税・たばこなどの密輸の取り締まり強化による歳入増といった案を提示しているが、EUが重視する年金削減、労働市場改革などに応じていない。今回の協議でも溝は埋まらず、EUは融資再開を認めなかった。

ギリシャは融資凍結によって資金繰りが悪化し、IMFなどへの債務返済や年金、公務員の給与支払いに必要な資金の確保が厳しくなっており、地方自治体や公共機関の預金をかき集めて急場をしのいでいる状態。11日には翌日に期限を迎えるIMFの7億5,700万ユーロの融資を返済したが、今後も多額の資金が必要で、EUの残る融資が実行されなければデフォルト(債務不履行)に陥りかねない。とはいえ、左派の新政権は財政緊縮放棄を掲げて総選挙で勝利しただけに、EUへの大幅な譲歩は公約違反となる。このため政権内では同問題をめぐる国民投票を実施し、国民の賛同を取り付けてEUが求める改革を推進しようとする動きも出ている。さらに政府は14日、EUから消極的と批判されている国有資産民営化について、国内最大の港湾であるピレウス港の民営化手続きに着手した。