欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/1

EU情報

英がEU改革めぐる折衝開始、独仏首脳らに理解求める

この記事の要約

英政府がEU離脱の是非を問う国民投票に向けた準備を本格的に進めている。キャメロン首相は5月27日の施政方針演説(エリザベス女王が代読)で、国民投票の実施を正式に表明。25日から29日にかけてユンケル欧州委員長、独仏などE […]

英政府がEU離脱の是非を問う国民投票に向けた準備を本格的に進めている。キャメロン首相は5月27日の施政方針演説(エリザベス女王が代読)で、国民投票の実施を正式に表明。25日から29日にかけてユンケル欧州委員長、独仏などEU4カ国の首脳と会談し、残留の鍵を握るEUの改革への理解を求めた。

国民投票は2017年末までに実施される。EU離脱に消極的なキャメロン首相は、EUをめぐる国民の不満を和らげるため、英国が求めるEUの改革案に対する合意を取り付けた上で投票に臨むという戦略を描いている。改革案は6月下旬のEU首脳会議で正式に提案するが、◇EUからの移民に対する社会保障給付の制限◇英で就労できない移民に退去を命じる権限の確保◇EU統合の深化から英国が除外される権利の確保◇英などユーロに参加しない加盟国が経済統合で不利にならないようにする――といった改革を求める見通しだ。

ただ、これらはEU基本条約の改定を伴い、条約改定には全加盟の賛同が必要となることから、キャメロン首相は6月の首脳会議までに全加盟国の首脳と会談し、支持を求めることになっている。

キャメロン首相は皮切りとして、25日に欧州委員会のユンケル委員長と会談し、国民がEUの現状に不満を抱いているとして、改革実現への協力を要請。加盟国間の交渉を通じて解決策を模索していくという方針で一致した。

続いて首相は28日から29日にかけてフランス、ドイツ、オランダ、ポーランドを歴訪し、各国首脳に英国の立場を説明した。4カ国で最も理解を示したのは独メルケル首相。移民の追い出しには、域内の労働者の自由な移動はEUの基本理念として否定的だったが、社会保障の制限に関しては、ドイツも手厚い社会保障を目的に中東欧から移民が押し寄せている問題を抱えていることから、検討の余地があるとの認識を示した。また、メルケル首相はEU基本条約の改定について、「困難だ」としながらも「絶対に不可能とは言えない」と述べ、容認できる改革については条約改定に応じる姿勢を示した。

一方、他の3カ国は英のEU残留が必要との姿勢では一致したものの、EUの改革には慎重で、特にポーランドのコパチ首相は移民制限に猛反発。フランスはオランド首相が「英国が改革案を提示したら協議し、どうすれば前進できるか考えたい」と当たり障りのない反応にとどめたが、ファビウス外相は「英はサッカークラブに加盟したのに、試合の最中にラグビーをしようと言い出したようなものだ」と述べ、英国の動きを強くけん制した。