欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/12

EUその他

仏のGMトウモロコシ栽培禁止法案が可決、国務院は無効化の申立て却下

この記事の要約

フランス上院は5日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの国内での栽培を禁止する法案を賛成多数で可決した。下院は4月に同法案を可決しており、フランスではEUが将来的に認可する品種を含め、すべてのGM作物の栽培が禁止される。 […]

フランス上院は5日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの国内での栽培を禁止する法案を賛成多数で可決した。下院は4月に同法案を可決しており、フランスではEUが将来的に認可する品種を含め、すべてのGM作物の栽培が禁止される。

法案は米モンサントが開発した害虫抵抗性のトウモロコシ「MON810」の栽培を禁止するという内容。同品種は域内での栽培が認可されている唯一のGM作物だが、EU市民の間では依然としてGM作物に対する懐疑論が根強く、実際に栽培されているのはスペインとポルトガルの2カ国にとどまっている。仏農業省は適切な管理措置を講じることなくMON810の栽培を認めた場合、環境に重大な影響を及ぼす恐れがあると指摘し、3月に「科学的データに基づく予防的措置」として、国内での栽培禁止を決定。播種期が迫っているためただちに省令が発動され、その後、議会で承認手続きが進められていた。

一方、行政訴訟で最上級審の仏国務院(コンセイユ・デタ)は同日、MON810の栽培禁止を定めた省令の無効化を求める生産者らの申立てを却下した。トウモロコシ生産者協会(AGPM)は栽培禁止命令によって経営に深刻な影響が及び、多大な損害を受けると主張していたが、国務院の担当判事は、フランス国内でGM種子から栽培されるトウモロコシはごく少量で影響は限定的と指摘。行政機関の決定に対して裁判所が執行停止を命じる際の要件となる「緊急性」が認められないと結論づけた。

EU内では英国やスペインを中心とするGM推進派と、安全性への懸念から域内での商業栽培に強く反対するフランスやイタリアなどの間で溝が埋まらず、議論は平行線をたどっている。2月には米ダウ・アグロサイエンスと、米デュポン傘下のパイオニア・ハイブレッド・インターナショナルが共同開発した害虫抵抗性・除草剤耐性のトウモロコシ「TC 1507」栽培認可の是非について採決を行ったが、認可支持派、反対派のいずれも決定に必要な票数を得ることができず、規定により欧州委員会に最終判断を委ねた。欧州食品安全機関(EFSA)は「1507は安全」との見解を改めて表明しており、欧州委はこれに沿って同品種の認可手続きを進めるものとみられる。