欧州委員会は22日、仏電力公社(EDF)に対する税優遇措置がEUの国家補助規定に違反するとして、仏政府に総額13億7,000万ユーロの回収を命じたと発表した。欧州委は2003年にも同様の決定を下したが、欧州司法裁判所が決定を無効とする判断を示したため、改めて調査を進めていた。
EDFは04年11月に一部株式が公開され部分的に民営化されたものの、現在も仏政府が株式の85%を保有している。欧州委によると、EDFは1996年までの10年間にわたり、高圧送電網の整備費用として引当金を計上していたが、97年にバランスシートを再構築する際、税務当局が引当金の一部を資本注入として分類したことで法人税が徴収されなかった。欧州委は03年、こうした税優遇措置がEDFに不当な優位性を与え、公正な競争をゆがめたとの調査結果をまとめ、仏政府に対して本来の課税額として8億8,900万ユーロを回収するよう命じた。しかし、欧州裁の一般裁判所は09年、引当金を資本注入として処理した当局の措置を違法とした欧州委の判断について、仮に民間の投資家が同じ状況でEDFに税控除と同規模の投資を行ったかどうか検証していないと指摘。返還命令を無効とする判決を下し、司法裁もこれを支持した。
欧州委は判決を受け、2年前に改めて調査を開始した。裁判所の指摘に関しては、当時の状況ではEDFに対する投資を回収できる見込みは極めて低く、民間投資家が損失を覚悟で数億ユーロ規模の資金提供を行ったとは考えられないと反論。このため税優遇措置は経済的理由に基づく投資とはいえず、実質的に国による不当な補助金にあたると結論づけた。
欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は「新たな調査を通じてEDFが不当な税控除を受け、それによって他社との競争で優位な立場を維持していたことが確認された」と説明。これに対し、EDFは「違法な補助金を受けた事実はない」と反論し、提訴を含めて対応を検討する方針を示している。