欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/3

EU情報

域内農家への支援策を来年まで延長、ロシアの禁輸延長に対応

この記事の要約

欧州委員会は7月30日、ウクライナ問題をめぐる欧米の経済制裁に対抗してロシアが発動した禁輸措置で苦境に立つEU内の農家への支援策を延長する方針を発表した。ウクライナ東部での停戦合意が完全に履行されていないとして、EUが対 […]

欧州委員会は7月30日、ウクライナ問題をめぐる欧米の経済制裁に対抗してロシアが発動した禁輸措置で苦境に立つEU内の農家への支援策を延長する方針を発表した。ウクライナ東部での停戦合意が完全に履行されていないとして、EUが対ロ制裁を6カ月延長することを決めたのに対し、ロシア側が6月末、EUや米国などからの農産物の禁輸措置を1年延長して来年8月までとする方針を打ち出したのを受けた措置。数週間以内に支援の規模や対象など詳細を詰める。禁輸延長に伴う影響を緩和するため、野菜・果物農家向けは来年6月末、酪農家向けは来年2月末まで支援プログラムを延長する。

EUによる農家支援は、ロシアに輸出できなくなった農産物が行き場を失って域内市場に流通し、供給過剰となって値崩れを起こすのを防ぐための措置で、生産者が出荷を取りやめた場合などに補償を行う仕組み。

欧州委によると、青果物についてはこれまでに1億5,500万ユーロの予算を投じてトマト、ニンジン、キャベツ、リンゴ、ブドウ、オレンジ類など、およそ77万トン分の出荷が見送られた。現行の支援プログラムは6月末で失効しているため直ちにこれを1年延長し、引き続き補償と引き換えに慈善団体への無償提供や、家畜飼料や堆肥などへの転換を奨励する。

一方、酪農部門ではロシアによる禁輸措置に加え、中国市場での需要鈍化による世界的な供給過剰の影響で今後も牛乳や乳製品の価格下落が見込まれることから、来年2月まで支援プログラムを延長し、引き続きバターおよびスキムミルクパウダーの介入買入れと民間在庫補助(PSA)を実施する。支援規模については過去3年間のロシア向け輸出量を基に、生産量ベースで各国に枠が割り当てられる。