欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/8/3

EU情報

キプロス産チーズのPDO登録手続き開始、南北再統一に向けた一歩に

この記事の要約

欧州委員会は7月28日、ヤギと羊のミルクを原料とするキプロスの代表的なチーズ「ハルミ(Halloumi)/ヘリム(Hellim)」を原産地呼称保護(PDO)の対象に加えるための手続きを開始し、同日付のEU官報でキプロス側 […]

欧州委員会は7月28日、ヤギと羊のミルクを原料とするキプロスの代表的なチーズ「ハルミ(Halloumi)/ヘリム(Hellim)」を原産地呼称保護(PDO)の対象に加えるための手続きを開始し、同日付のEU官報でキプロス側から提出された登録申請を公表した。今後3カ月以内にキプロス以外のEU加盟国に拠点を置く法人または個人から異議の申立てがなければ、「ハルミ」(ギリシャ語)および「ヘリム」(トルコ語)の呼称が新たにPDOとして登録され、北部のトルコ軍支配地域を含むキプロス島全域で生産される伝統的な塩漬けチーズが保護対象となる。

PDOはEU内で生産される質の高い食品を保護・継承するための品質認証制度のうち最も基準が厳しく、特定の地域で受け継がれた製法や手法に従って生産・加工・製造される農産物、食品、飲料が対象。英国のウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダーチーズやギリシャのシティア・オリーブオイルなどが該当する。

キプロスは1974年にトルコ軍がトルコ系住民の保護を名目に北部の約3分の1を占領して以来、南部のキプロス共和国政府支配地域(ギリシャ系)と北部のトルコ系地域に分断された状態が続いている。2004年5月には南北に分かれたままEUに加盟したが、北キプロス地域についてはキプロス共和国の実効支配が及んでいないため、再統一されるまでEU法は適用されないことになっている。

しかし、ハルミ/ヘリム・チーズがPDOの対象品目として登録されると厳格な品質管理が義務付けられ、キプロス政府は北部の非支配地域も含めて製造プロセスなどを監視するシステムを構築する必要がある。このため、欧州委は南北キプロス間のモノと人の移動に関するルールを定めた「グリーンライン規則」(04年採択)を修正し、北キプロス地域にも規制の効力が及ぶようにすることを今回併せて提案した。

欧州委のユンケル委員長は「PDOの登録に向けたステップは、再統一を目指して協調するという南北キプロスの決意の表れだ。ハルミ/ヘリム・チーズはキプロス島を象徴する共有財産であり、何世紀も前から島に定住しているコミュニティと深く結びついた伝統でもある」とコメントしている。