欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/9/7

EU情報

アザラシ製品禁輸ルールの合法性が確定、欧州裁が先住民などの訴え却下

この記事の要約

EU司法裁判所は3日、EUが実施している域内へのアザラシ製品の輸入禁止をめぐり、同措置の実施ルールを定めたEU規則の無効化を求める訴えを退けた一般裁判所の判断を支持する判決を言い渡した。これにより、EUが2009年に採択 […]

EU司法裁判所は3日、EUが実施している域内へのアザラシ製品の輸入禁止をめぐり、同措置の実施ルールを定めたEU規則の無効化を求める訴えを退けた一般裁判所の判断を支持する判決を言い渡した。これにより、EUが2009年に採択したアザラシ製品の貿易に関する規則(基本規則)および翌年に制定された実施規則の合法性が確定した。

EUは棍棒を使った撲殺など残虐な手法が用いられるアザラシ猟に対する批判の高まりを受け、5年前からアザラシの生皮、肉、油脂と、それらを用いた製品の輸入を禁止する措置を導入している。先住民が自給のために伝統的な方法で行うアザラシ猟に由来する製品は対象外となっているが、カナダの先住民族イヌイットの団体をはじめとする16団体は、輸入規制により市場が縮小して深刻な経済的打撃を受けるなどと主張し、禁輸措置を柱とする基本規則の取り消しを求めて一般裁判所に提訴した。しかし、同裁判所はEU法が定める原告適格の条件を満たしていないとの理由で訴えを退け、EU司法裁も上訴を却下した。

原告側はこれに対し、基本規則の主たる目的は動物福祉・保護であり、こうした分野はEUによる「排他的権限」の対象とはならないと指摘。このため基本規則は違法であり、実施規則に法的根拠を与えていないとして、無効とするよう求めていた。

一般裁判所は13年4月、動物福祉を考慮しつつ、アザラシ製品の取り扱いについてEUレベルで対応を統一することで、域内市場の運営条件を改善することが基本規則の最大の目的と説明。イヌイットをはじめとする先住民族に配慮した例外規定を設けている点にも触れ、基本規制は「合法」と結論づけたうえで、実施規則には法的根拠がないとする原告側の主張を退けた。原告側は判決を不服として上訴したが、EU司法裁は今回、一般裁判所の判断を全面的に支持した。