欧州委員会は9月30日、EUの資本市場を活性化し、域内の企業などが資金を調達しやすくする環境を2019年までに整える「資本市場同盟(CMU)」構想の実現に向けた行動計画を発表した。銀行が証券化市場の活用によって資金調達を増やし、企業への融資を拡大することなどが柱となっている。
CMUは欧州委が今年2月に打ち出した構想。単一の資本市場を構築し、企業やインフラ整備プロジェクトを手掛ける事業者などによる域内の国境を越えた資金調達を促進することで、欧州経済の活性化と雇用創出につなげるのが狙いだ。先の世界金融危機を受けた信用収縮で企業の資金調達に困難が生じ、域内経済の成長を圧迫した反省を踏まえ、資金調達における銀行への依存度を低減させ、調達源を多様化することを主眼に据えている。
欧州委は同構想を発表した際、国境を越えた投資を妨げる規制の撤廃、金融サービス分野における統一ルールの策定などを目標に設定。企業が有価証券の売り出しに際して投資家に提出する目論見書に関する規定を見直し、申請や承認手続きを簡素化して資金調達を円滑化することや、資産担保証券(ABS)をはじめとする証券化商品を活用した資金調達の推進、国境をまたいで活動する投資ファンドの設立・運用コストの低減、EU各国の税制や証券法、破産法などの調和、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ市場の育成などを掲げていた。
今回発表した行動計画は、これらを実現するための具体的な措置をまとめたもの。証券化市場の活用拡大は、短期での実現を目指す分野のひとつに指定された。信用力の高いローン債権などを裏付けとする高品質で透明性が高い証券化商品の導入に向けた規制の枠組みを設けるという内容だ。これによって銀行が資金調達のため証券化商品を機関投資家に販売しやすくする環境を整備し、企業などに供給する資金を増やす意図がある。欧州委は証券化商品の発行が金融危機前のレベルに回復すれば、1,000~1,500億ユーロの資金が経済に還流されると見積もっている。
このほか短期的な措置として、保険会社によるインフラ事業への投資を増やすため、域内経済の底上げにつながるような長期的プロジェクトに投資する場合の資本要件を緩和し、キャピタル・チャージ(資本費用)を軽減する方針を打ち出した。中小企業の上場目論見書に関する規制緩和を年内に検討することなども盛り込んだ。