欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/12

EU情報

タックスルーリングの情報交換システム、加盟国が17年導入で合意

この記事の要約

EUは6日、ブリュッセルで経済・財務相理事会を開き、加盟国間でタックスルーリング(税務当局が企業と結んだ課税措置についての取り決め)に関する情報を自動的に交換するシステムを導入するための指令案を全会一致で決めた。2017 […]

EUは6日、ブリュッセルで経済・財務相理事会を開き、加盟国間でタックスルーリング(税務当局が企業と結んだ課税措置についての取り決め)に関する情報を自動的に交換するシステムを導入するための指令案を全会一致で決めた。2017年1月から新ルールが導入され、各国当局はすべての加盟国に対してタックスルーリングに関する情報提供を義務づけられる。

タックスルーリングは税務当局と企業が予め課税内容について協議し、各国の税制に沿って妥当な申告額を事前に取り決める制度。企業にあらかじめ法的確実性を与えることが同制度の目的だが、不当な優遇措置が盛り込まれている場合は競争阻害や財源浸食につながる可能性がある。このため欧州委員会は今年3月、税の透明性を高めて多国籍企業による課税逃れを防止するための新たな法案パッケージの一環として、タックスルーリングに関する自動情報交換システムの導入を提案。税制関連の立法手続きでは全会一致の承認が必要なため、誘致の見返りとして多国籍企業に優遇税制を適用してきた加盟国の抵抗も予想されたが、経済協力開発機構(OECD)と20カ国・地域(G20)で新たな国際課税ルールに関する議論が進められるなか、法案提出からわずか7カ月で新システムの導入が決まった。

加盟国は新指令に沿って16年末までに国内法を整備する必要がある。各国の税務当局は6カ月ごとにタックスルーリングに関する情報(どの企業と、どのような取り決めを結んでいるか)を他の加盟国に報告しなければならず、当該措置の影響を受ける加盟国はさらに詳しい情報を要求できる。また、新ルールは遡及適用され、発効日の17年1月1日時点で効力を有するタックスルーリングに関しては、5年前に遡って情報交換しなければならない。ただし、中小企業については遡及適用の範囲が1年に短縮される。

多国籍企業に対する課税措置をめぐっては、これまでも各国当局による連携の仕組みはあったものの、情報交換は任意ベースだったため、国境を越えて影響が及ぶタックスルーリングの実態はほとんど把握されていなかった。情報交換を義務化することで加盟国は早い段階で有害な税慣行を特定し、必要な対策を講じることが可能になる。ただ、3カ月ごとの情報交換と10年間の遡及適用を提案していた欧州委の原案に比べると、緩やかなルールに修正された。