2015/11/2

西欧

ドイツ銀行が大規模な合理化、18年までにコスト38億ユーロ圧縮

この記事の要約

独最大手銀行のドイツ銀行は10月29日、中期経営戦略「シュトラテギー2020」の詳細を発表した。コスト削減や事業の見直しを通して財務基盤・収益力を強化することが狙いで、リスクの高い事業・市場から撤退。従業員も大幅に削減す […]

独最大手銀行のドイツ銀行は10月29日、中期経営戦略「シュトラテギー2020」の詳細を発表した。コスト削減や事業の見直しを通して財務基盤・収益力を強化することが狙いで、リスクの高い事業・市場から撤退。従業員も大幅に削減する。

ドイツ銀はシュトラテギー2020の概要を今春に発表。リテール(小口金融)子会社ポストバンクの放出や、投資銀行事業の整理・縮小、業務・サービスのデジタル化に伴う国内支店の統廃合などを打ち出した。

年間コストは2018年までに38億ユーロ減の220億ユーロ未満に圧縮する方針で、アルゼンチン、チリ、マルタなど計10カ国のオンショア事業から撤退。投資銀行分野ではリスクの高い国を中心に顧客数を約50%減らす。ドイツ銀は同分野の利益の80%を30%の顧客との取引で稼いでおり、顧客数の絞り込みは収益力の強化につながるという。

個人顧客・中堅企業部門でもクロスセリングを重視し、単一の金融商品しか購入しない顧客との取引は縮小していく。また、ネットバンキングの拡大を踏まえドイツ国内の支店750カ所のうち200カ所以上を統廃合する。

これらの措置に伴い正社員を約1万4,000人削減する。同時にIT分野などで計5,000人を新規採用することから、雇用削減は約9,000人(フルタイム勤務換算)となる。ドイツ銀はポストバンクを分離するため、グループ全体の雇用規模は18年までに現在の10万3,000人から約7万7,000人へと減少する見通しだ。約3万人いる契約社員も6,000人削減する。

同行はまた、リスク加重資産を18年までに900億ユーロ圧縮するほか、2015年と16年の配当を見送る。無配は戦後初めて。

このほか、30億ユーロを投じて2020年までにITシステムを刷新することも明らかにした。同行には現在、計45ものITシステムが併存。互換性のないシステムも多く業務の妨げになっていることから、そうした支障を解消し、業務効率を引き上げる考えだ。

これらの措置により、狭義の中核自己資本比率(CET1比率)を18年末以降12.5%以上へと改善。総資産に対する自己資本の比率であるレバレッジ比率も18年末に最低4.5%、20年末には同5%を達成する目標だ。税引き後の自己資本比率(ROE)は18年までに10%以上へと引き上げる。

ドイツ銀行は投資銀行部門が行った違法行為の影響で業績が大幅に悪化し、抜本的な改革が必要となっている。12年以降に計上した法務関連の費用は総額112億ユーロに上る。これは13年と14年に実施した計108億ユーロの巨額増資を上回る。

12年からこれまでに計上した税引き後利益は計58億ユーロだった。仮に法務関連の費用を計上していなければ同利益は大幅に増えており、同費用がドイツ銀の利益を強く圧迫していることが分かる。

同行は現在、計1,000件の係争を抱えており、法務リスクは今後も利益を圧迫する。こうした費用を捻出するためにリスク資産の圧縮、コスト削減、無配といった措置に踏み切った。新たな増資は株主の理解を得ることが難しく、ジョン・クライアン新共同最高経営責任者(CEO)は実施する考えがないと明言した。

新たな法務リスクを抱え込まない体制の構築は重要な課題であり、経営陣は法令順守の意識を行員に浸透させる考えだ。給与・賞与の査定では業績だけでなくそうした面も反映させていく。

ドイツ銀が同日発表した7-9月期の純損益は60億2,400万ユーロの赤字となり、赤字幅は前年同期の9,200万ユーロから65倍に膨らんだ。巨額の評価損と訴訟関連の引当金を計76億ユーロ計上したことが響いた。1-9月の純損益も前年同期の黒字(12億5,000万ユーロ)から46億4,700万ユーロの赤字に転落しており、同行は15年12月通期でも赤字を見込んでいる。