EUとアフリカ諸国は11、12の両日、マルタの首都バレッタで首脳会議を開き、地中海を渡って欧州を目指す難民や移民の流入を抑制するための対策を協議した。アフリカ側が経済的な理由で欧州に渡った不法移民の本国送還などで協力する見返りとして、EUは最低18億ユーロの基金を設立。雇用創出策や正規移民の受け入れ拡大などを通じ、移民・難民を生む原因となっている貧困や紛争などの問題解消に向けた取り組みを支援する。
EUは内戦が続くシリアなどから計16万人の難民を加盟国が分担して受け入れる方針を決めているが、アフリカからは圧政と貧困が続くエリトリア出身者しか受け入れを認めていない。EUは同国以外から欧州に押し寄せる難民申請者を原則として経済目的の移民とみなす方針を確認し、アフリカ諸国に対して本国送還への協力を要請。アフリカ諸国は難民申請を却下された自国出身者を速やかに受け入れると共に、専門家を欧州に派遣し、欧州に滞留している不法移民の出身国の特定などを支援することで合意した。これに対し、EU側は特定の職種や留学生などの受け入れを拡大し、学生やビジネス向けのビザ発給を簡素化する。また、欧州からアフリカに送金する際の手数料を引き下げることも盛り込んだ。
一方、基金はEU予算から18億ユーロを拠出し、加盟国に対してさらに18億ユーロの分担を求めている。食糧対策のほか、現地での職業訓練や雇用創出につながるプロジェクトの資金、密航業者を取り締まるための対策費などの財源に充てる。
EUとアフリカ諸国は貧困や紛争、政情不安を解消しない限り、難民や移民は今後も増え続けるとの認識で一致。双方が協力して「不法移民や強制的な移動につながる根本原因に対処する」との共同宣言を採択した。EUのトゥスク大統領は合法的な移民の道は常に開かれていると強調。EUとアフリカが連携して貧困、内戦、気候変動など、難民が生まれる根本原因の解消を目指す姿勢をアピールした。