欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/11/16

EU情報

MiFIDⅡ実施が1年延期の公算、17年1月施行は「技術的に困難」

この記事の要約

欧州委員会と欧州証券監督機構(ESMA)は10日、より安全で透明な金融システムの構築を目的とする新たな金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」の施行が当初の予定から1年遅れ、2018年1月に延期されるとの見通し […]

欧州委員会と欧州証券監督機構(ESMA)は10日、より安全で透明な金融システムの構築を目的とする新たな金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」の施行が当初の予定から1年遅れ、2018年1月に延期されるとの見通しを明らかにした。新ルールにITシステムなどを対応させるには複雑な作業が必要で、16年末までにすべての行程を終えることは技術的に極めて困難と指摘している。米国はすでにドッド・フランク法(ウォール街改革および消費者保護法)のもとで規制改革を進めており、欧州議会では新指令の導入延期による欧州金融市場の競争力低下を懸念する声が上がっている。

EUでは07年に現行指令の「MiFID」が施行され、資本市場および投資サービスのための包括的な枠組みとして機能してきた。しかし、規制対象が限定されているため市場の透明性が十分に確保されず、これが金融危機を招く一因になったと考えられるようになった。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て昨年4月に成立した「MiFID Ⅱ」は、新たに債権などの投資商品や私的プラットフォーム上での取引を幅広く規制することで、市場の透明性を高めて投資家保護を強化することを目指している。

欧州委の金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局(DG FISMA)金融市場担当のメルラン部長は、欧州議会の経済・金融委員会(ECON)が10日開いた聴聞会でMiFIDⅡの導入に向けた準備状況について説明した。同氏は技術的な側面から現状を分析した結果、新指令を「円滑かつ効果的に」実施するには導入時期を延期する必要があると指摘。「延期するルールの範囲や期間を決める必要がある」としたうえで、「MiFIDⅡ全体の施行を1年遅らせることが最もシンプルで法的にも妥当なアプローチだろう」と述べた。

また、ESMAのマイヨール長官も聴聞会で証言し、監督当局と規制の適用を受ける金融機関やブローカーなどはあらゆるITシステムを新指令に対応させなければならず、17年1月までにすべての作業を完了することは「実現不可能」と発言。部分的に新指令の導入が延期される可能性があると述べた。