ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、本社ベルギー)は11日、同2位の英SABミラーを買収することで正式合意したと発表した。買収額は710億ポンド(約1,120億ユーロ)。食品・飲料業界の買収・合併では過去最大となる。
ABインベブは9月中旬に買収を打診。当初の買収額は1株当たり38ポンドだったが、SABミラーが低すぎるとして拒否したため、最終的に44ポンドに引き上げ、10月中旬に買収で基本合意していた。
ABインベブは「バドワイザー」「コロナ」などのブランドで知られ、世界で約20%のシェアを握る。SABミラーはシェアが約10%で、アフリカ、中国など新興市場に強みを持つ。ABインベブはSABミラーの買収によってシェアが約3割に拡大。特にビール需要の急増が見込める新興市場の事業を大きく強化できる。また、買収完了から4年目で14億ドル以上のコスト節減効果を見込む。
ABインベブは2016年下期の買収手続き完了を目指す。同買収をめぐっては、ABインベブが一段と巨大化するため、関係国当局の認可を取り付けることができるかどうかが今後の焦点となる。ABインベブは同日、米国での認可に向けて、SABミラーが米合弁会社モルソン・クアーズの株式58%を120億ドルで合弁相手のモルソン・クアーズに売却すると発表した。ABインベブがすでに米市場で46%のシェアを持っていることから、SABミラーが米事業を放出することで競争上の問題を解消する狙いがある。
ただ、中国当局などによる買収認可はすんなりといかない見通しで、ABインベブが一部資産の売却などを迫られる可能性がある。