欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/11/30

EU情報

EU18カ国にマクロ経済不均衡の潜在リスク、欧州委が年次報告書を公表

この記事の要約

欧州委員会は26日、EU加盟国の経済状況を分析した「警戒メカニズム報告書(AMR)」を公表した。EU28カ国のうちドイツ、フランス、イタリアなどを含む18カ国については、経常黒字の恒常化や公的債務の増大による財政悪化とい […]

欧州委員会は26日、EU加盟国の経済状況を分析した「警戒メカニズム報告書(AMR)」を公表した。EU28カ国のうちドイツ、フランス、イタリアなどを含む18カ国については、経常黒字の恒常化や公的債務の増大による財政悪化といったマクロ経済不均衡の潜在的リスクがみられるため、引き続き監視を続けるとしている。詳細な評価レポートは来年2月に公表される見通しで、経済不均衡が「過剰」とみなされた国は不均衡是正に向けた行動計画の策定が求められ、欧州委が実施状況を監視することになる。

AMRは2010年のギリシャ債務危機を発端とするユーロ危機を受けて導入された「ヨーロピアン・セメスター」(予算案や経済政策の策定に先立ち、EUレベルで加盟国の政策を評価し調整する仕組み)に基づく最初の手続きで、欧州委が各国の経常収支や債務水準などをチェックして毎年この時期に報告書をまとめている。今回はユーロ圏19カ国のうち12カ国と、英国やスウェーデンを含む非ユーロ圏6カ国に過度な経済不均衡の兆候がみられるとの結論をまとめた。

報告書はまず、公的債務の増大や潜在成長率の低下傾向が多くの国にとって潜在的なリスク要因になっているとしたうえで、イタリア、フランス、ベルギーの3カ国では巨額の公的債務による財政悪化が特に顕著と分析。潜在成長率を高めるため構造改革を急ぐ必要があると指摘している。欧州委によると、15年のイタリアの公的債務残高はGDP比で133%に達し、EU内ではギリシャに次ぐ規模に膨らむ見通し。フランスは17年に同97.4%、ベルギーも16年に107.1%に達するとみられており、EUが加盟国に求めている「GDP比60%」を大幅に上回っている。

一方、経常黒字が高水準で推移しているドイツとオランダに対しては国内への投資拡大を求めた。EUは域内の経済均衡を保つため、経常黒字をGDP比で6%以内に抑えるよう加盟国に求めているが、ドイツは16年にこの比率が8.6%、オランダも同10%超に達する見通し。欧州委は両国の経常黒字がユーロ圏の成長率や競争力を押し下げる潜在リスクになると分析している。