欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/12/7

EU情報

欧州委がマクドナルドも調査対象に、ルクセンブルクの税優遇問題で

この記事の要約

欧州委員会は3日、米ファストフード大手マクドナルドがルクセンブルクから受けた税優遇措置がEU法に違反する疑いがあるとして、本格調査を開始したと発表した。最終的に違法と判断した場合、ルクセンブルクは多額の追徴課税を命じられ […]

欧州委員会は3日、米ファストフード大手マクドナルドがルクセンブルクから受けた税優遇措置がEU法に違反する疑いがあるとして、本格調査を開始したと発表した。最終的に違法と判断した場合、ルクセンブルクは多額の追徴課税を命じられる可能性がある。

欧州委によると、マクドナルドは欧州とロシアのフランチャイズ店から徴収したブランド使用料やレシピなどに関わるロイヤルティーをルクセンブルクの現地法人に集めた後、米国支社に移転していたが、ルクセンブルクの税務当局は2009年以降、実際には米国でこの利益が課税対象になっていないことを知りながら、利益移転を認めることで自国での課税を免除する優遇措置を提供していた。マクドナルドは13年に欧州のフランチャイズ店から2億5,000万ユーロ超の利益を得ていたが、ルクセンブルクへの納税額はゼロだったとされる。

欧州委のヴェスタエアー委員(競争政策担当)は「(ルクセンブルクと米国間の)租税協定は二重課税を防止するためのもので、二重に課税を免れることを正当化するためではない」と指摘。ルクセンブルク当局がマクドナルドと交わした取り決めは、特定の企業を優遇して公正な競争を妨げる「違法な国家補助」にあたる可能性があるとの見方を示した。マクドナルドはこれに対し、欧州におけるあらゆる課税ルールを順守しており、10-14年にかけてEU加盟国に対して総額21億ユーロ以上の法人税を納めたと反論している。

欧州委は多国籍企業による租税回避を認めない姿勢を強く打ち出し、取り締まりを強化している。10月には米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する税優遇措置が違法な国家補助にあたるとの判断を示し、優遇を認めていたオランダとルクセンブルクの税務当局に追徴課税するよう命じた。追徴額はそれぞれ2,000万~3,000万ユーロに達する見通し。欧州委はこのほか、米アップルに対するアイルランドと、米アマゾン・ドット・コムに対するルクセンブルクの税優遇措置についても本格調査を進めている。