欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/1/4

EU情報

英要求のEU制度改革、2月の決着目指す=EU首脳会議

この記事の要約

EU加盟国は12月17、18日に開いた首脳会議で、英国がEU残留のため必要と主張しているEUの制度改革について協議し、2月の首脳会議での決着を目指して話し合いを続けることで合意した。英政府が提示した改革案のうち、事実上の […]

EU加盟国は12月17、18日に開いた首脳会議で、英国がEU残留のため必要と主張しているEUの制度改革について協議し、2月の首脳会議での決着を目指して話し合いを続けることで合意した。英政府が提示した改革案のうち、事実上の移民制限に大多数の国が強く反発しており、同問題で妥協案をまとめることができるかどうかが最大の焦点となりそうだ。

5月の総選挙で与党・保守党が勝利し、再選を果たした英国のキャメロン首相は、EU離脱の是非を問う国民投票を2017年末までに実施する方針を打ち出している。移民流入急増などを受けて高まっている国内の反EU勢力の不満を抑えるため、選挙前に公約したものだが、首相自身は離脱に否定的で、国民投票までにEUに制度改革を認めさせ、国民の反EU感情を和らげた上で残留を取り付けたい考えだ。

キャメロン首相が11月に提示した改革案は◇英国などユーロを導入していないEU加盟国が不利な扱いを受けないようにする◇加盟国の議会の権限を強化することで、英国などEU統合の「深化」を望まない国が深化に関するルールの適用を除外される権利を確保する◇EUからの移民に対する社会保障給付を4年間は制限する◇域内の規制緩和による競争力強化――の4つ。当初は12月の首脳会議での合意を目指していたが、各国との折衝で早期に合意できる感触を得ることができなかったため、今回の協議での妥結を断念し、2月の合意を目指す方針を打ち出していた。

EUの制度改革案が首脳会議で本格的に協議されたのは初めて。初日の会議で議題となった。個別の提案に関する突っ込んだ協議は予想通り行われず、閉幕後に発表された議長総括に「2月18、19日の首脳会議で相互に満足できる解決策を見出すため、加盟国が緊密に連携して作業を進めることで合意した」という文言を盛り込むにとどまった。

4つの提案で最大の焦点となっているのは移民制限。EUが最も重視する域内の人の自由な移動を認めるという原則に反するためだ。今回の協議では、他の改革案については抵抗が小さかったものの、同問題に対してはフランスや中東欧諸国などが断固反対を表明し、AFP通信によると理解を示したのはアイルランド、デンマークだけだった。EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)も記者会見で「受け入れられない」と述べた。ギリシャ、ベルギー、ポルトガルの3カ国は、今後の協議の対象から移民制限問題を外すよう要求したとされるが、議長総括では英国の立場に配慮し、最終的に4つの提案すべてを検討していくことを明記したという。

キャメロン首相は首脳会議後の記者会見で「進展はあったが、見通しは厳しい」と述べた。制度改革で全加盟国の合意を取り付けるためには、移民制限で妥協せざるを得ない状況で、英フィナンシャル・タイムズによると、加盟国の公共サービスが移民の急増で立ち行かない状況に陥った場合に移民流入を一時的に制限することを認める「セーフガード」導入などが代替案として浮上しているという。