移民対策「実行が不十分」、国境警備隊創設は6月末までに結論=EU首脳会議

EUは12月17、18日に開いた首脳会議で中東や北アフリカから欧州に流入する難民・移民問題について協議し、加盟国やEUの諸機関に対してこれまでに決定した措置の速やかな実行を求める合意文書を採択した。一方、首脳会議に先立って欧州委員会が提案した「欧州国境沿岸警備隊」の創設計画に関しては、2016年6月末までに結論をまとめることで合意した。

欧州委員会によると、昨年1月から11月末までに欧州に流入した難民や移民は過去最高のおよそ150万人に上った。多くの難民らが押し寄せるギリシャなどでは国境管理が機能不全に陥り、最終目的地となっているドイツやスウェーデンなどは一時的に国境審査を復活させて難民や移民の流入をコントロールしている。

EUは難民問題が深刻化した昨夏以降、シリア難民などを加盟国が分担して受け入れることや、EU域内に流入した難民の登録拠点を整備することなどで合意したが、これまでに実行されたのはごく一部にとどまる。たとえば難民の受け入れ分担に関しては、2年間で計16万人を受け入れる計画に対し、実際に分担されたのは200人程度。また、ギリシャとイタリアの10カ所以上に「ホットスポット」と呼ばれる難民管理センターを設置し、難民申請者の登録手続きなどを集中的に処理する構想に関しても、これまでに設置されたのは両国で1カ所ずつにとどまる。さらに難民対策のための財源確保も思うように進んでいない。

合意文書はEUがこれまでに合意した難民対策について、「十分に実行されておらず、取り組みを加速させなければならない」と明記。早急に対処すべき課題として、加盟国による難民の受け入れ分担、難民申請の円滑な処理、認定基準を満たしていない移民の本国送還などを挙げた。

一方、EU全体で域外との国境警備にあたる「欧州国境沿岸警備隊」を創設する構想に関しては、「オランダがEU議長国を務める間に」結論を出すことで一致した。オランダは16年1月から6月末まで議長国を務めることになっている。欧州委の提案によると、欧州警備隊は既存の「欧州対外国境管理協力機構(フロンテクス)」より強力な権限を持ち、当事国からの要請や同意がなくても独自の判断で域外との国境管理に介入することができる。また、フロンテクスが加盟国の自発的な協力で成り立っているのに対し、欧州警備隊は常時1,500人程度の人員と必要な物資を確保して緊急時に備える。

ドイツやフランスなどが欧州警備隊の創設構想に支持を表明する一方、当事国の同意なしに介入できる仕組みについて東欧諸国などから慎重論が出ている。国境管理は各国の主権にかかわる問題で、EUの介入拡大は原則に反するといった意見に対し、欧州委のティメルマンス第1副委員長は首脳会議に先立ち、「欧州警備隊の創設はあくまでもセーフティーネットだ。実際に介入するケースがないことが望ましいが、域外との国境警備強化に向けた具体策が必要だ」と述べ、加盟国に理解を求めた。

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