英金融大手のHSBCホールディングスは15日、本社を引き続き英国に置くことを取締役会が決めたと発表した。HSBCは英国の金融規制、課税強化を受けて、本社を香港などに移転することを検討していたが、英政府が危機感を覚えて対応したことから、移転を中止する。
HSBCは昨年4月、本社の移転を検討すると発表した。英政府が金融危機後に金融規制を強化し、英国の銀行の海外資産に課税する制度を導入したことによるコスト上昇が理由で、1993年まで本社を置いていた香港が移転先の有力候補と目されていた。
しかし、政府が国内銀行業界の要求に沿って、海外課税の廃止を打ち出したことから、取締役会は全会一致で本社の英残留を決めた。香港が中国返還後も「一国両制」の下で言論・表現の自由などが認められているにもかかわらず、中国の影響力が増して自由が損なわれていることを考慮したとの見方もある。
ただ、HSBCは英国のEU離脱を警戒しており、スチュアート・ガリバー最高経営責任者(CEO)は国民投票で離脱が決まれば本社の従業員約1,000人をパリに移すことを検討するとしている。